高齢者の皮膚の特徴は?乾燥しやすい原因と適切なスキンケア方法について

年齢を重ねると、皮膚が乾燥してひび割れが起こったり、粉がふいたりといったトラブルが多くなりがちです。「高齢者だから仕方ない」と思うかもしれませんが、なぜこのような肌トラブルが起こってしまうのでしょうか?

この記事では、どうして高齢になると皮膚トラブルが増えてしまうのか、その原因を解説したのち、高齢者向けの適切なスキンケア方法について解説していきます。

高齢者の皮膚は乾燥しやすいのが特徴

生まれたばかりの赤ちゃんの肌はキメも整っていて、ぷるんと潤いに満ちていますが、高齢者になるとハリがなくなって乾燥し、カサカサとした皮膚になります。

どうしてこのような変化が起こるのか、皮膚のメカニズムから解説していきましょう。

皮膚のメカニズム

私たち人間の皮膚は、大きく分けると「表皮(ひょうひ)」と「真皮(しんぴ)」の二層構造になっていて、それぞれに次のような役割を持っています。

  • 表皮(ひょうひ):皮膚の一番外側にあって、外部からの異物侵入やダメージから肌を守っている。また、肌の水分が外に逃げないよう保持する役割もある。厚さは約0.2mm。
  • 真皮(しんぴ):表皮の下にあり、肌の弾力やハリに深く関係している。血管や神経、皮脂腺、汗腺といった重要な器官が集まっているのも特徴。厚さは約1.8mm。

そして、表皮はさらに下から「基底層(きていそう)」「有棘層(ゆうきょくそう)」「顆粒層(かりゅうそう)」「角質層(かくしつそう)」の4層からできています。

私たちの皮膚の細胞は、この表皮の一番下にある基底層で生成され、徐々に上に押し上げられて角質層に到達し、最後は垢となって剥がれ落ちて細胞の一生を終えます。

生まれたての赤ちゃんや子供、若者はこの一連のサイクル(いわゆる、肌のターンオーバー)の期間が短く、かつ絶えず起こっているので、常に健康的な細胞によって皮膚が作られていますが、高齢になるとこの肌のターンオーバーや皮膚の機能に低下が見られるようになります。

高齢になると皮膚の機能が低下

まず、肌のターンオーバーのサイクルが若い頃よりも長くなります。これにより、基底層にある細胞の生成スピードも遅くなるため、表皮が徐々に薄くなっていきます。あわせて、真皮層における弾性線維やコラーゲンの減少も起こることで、肌のハリも少なくなります。

また、健康的な皮膚であれば、表皮を覆う皮脂膜によって肌の水分が外部に放出されるのを防いでくれます。ですが、加齢に伴ってこの皮脂膜の生成が十分に行われなくなると、バリア機能が損なわれて乾燥が起き、カサカサ感や粉ふき、ひび割れ、かゆみなどが発生します。

そして、こうした高齢者に起きやすい乾燥は、表層のバリア機能の低下だけでなく、気候や季節、冷暖房の使い過ぎによる乾燥なども要因です。他にも、疾患や常用している処方薬による副作用でも肌の乾燥が起こる場合もあります。

【高齢者の乾燥肌】病院ではどう対処する?

では、乾燥肌によって病院を受診した場合、どのような処置をされることが多いのでしょうか?

保湿剤の処方が基本

加齢による乾燥肌には、保湿剤の処方が基本です。代表的な保湿剤を下記にまとめました。

  • ワセリン:刺激感が少ないが、少々ベタつきがある。
  • ヘパリン類似物質:保湿効果が高いのに加えて、ベタつきも少ないため塗りやすい。ただし、種類によってはわずかなにおいがある。
  • 尿素:保湿効果が高いのに加えて、ベタつきも少ない。ただし、炎症部位に塗ると刺激を感じる場合がある。

これらにはそれぞれ特徴があり、乾燥のタイプによって処方されるものが異なります。また、塗りやすさやにおい、ベタつきなどにも違いがあるため、医師と相談しながら適したものを使用するようにしましょう。

【高齢者向け】今日からできるスキンケア方法

最後に、乾燥肌を防ぐ、もしくはこれ以上悪化させないために今日からできるスキンケア方法について解説していきましょう。

具体的な対策は次の通りです。

  • 保湿ケアは丁寧に
  • 体を洗うときはぬるま湯で優しく
  • 衣類やタオルは刺激の少ないものを
  • 室内の乾燥に注意
  • 適度に水分を摂取する

保湿ケアは丁寧に

肌の乾燥対策で最も大切なのが、保湿ケアです。特に、入浴後は肌の水分がまだ蒸発しておらずしっとりとしているので、このタイミングで保湿剤を塗るのがベストでしょう。

実際に保湿剤を塗る場合は、まず保湿剤を手のひらに乗せたら、手のひら全体に馴染ませて体温で温めます。このとき、保湿剤の量は片腕1本に対して10円玉〜500円玉くらいの大きさが目安です。

そして、肌に塗る際は強く擦らないように注意し、手のひら全体を使って保湿剤を肌に染み込ませるように塗り広げましょう。特に、ひじや膝、かかとは骨が出ていて乾燥しやすいので、念入りに行うと良いです。

もし乾燥が強い場合は、保湿剤の量を増やすのではなく、保湿する回数を増やすようにしてください。保湿ケアのベストタイミングは入浴後ですが、寝る前や外出前など肌が清潔な状態のときはこまめに保湿をするのがおすすめです。

体を洗うときはぬるま湯で優しく

上記の保湿ケアと同様、体を洗うときや入浴時も乾燥対策を行う必要があります。中でも、高齢者の入浴においては、「ぬるま湯」で「優しく洗う」ことが重要です。

まず、40℃以上の熱すぎるお湯は、乾燥している高齢者の肌にとっては強い刺激となります。また、皮膚の水分保持機能を低下させ、乾燥を悪化させることにもなるので、長時間の入浴や1日に何度も入浴を行うのも控えた方が良いでしょう。

そして、乾燥肌を防ぐには「優しく洗う」ことも大切です。高齢者の中には、「ナイロンタオルでゴシゴシ洗わないと気が済まない」とか「垢擦りを頻繁にしている」という人がいますが、こうした行動は乾燥肌をさらに助長するため控えることを推奨します。

体を洗う際はボディソープをよく泡立て、泡のクッションで優しく撫でるように洗いましょう。泡立てるのが手間だと感じる場合は、泡で出てくるタイプのボディソープを使うのがおすすめです。

衣類やタオルは刺激の少ないものを

普段使用するタオルや衣類なども、刺激の少ないものを選ぶようにしましょう。

特に、ナイロンやポリエステルといった化学繊維が含まれているものは、チクチクとした刺激になりやすく、かゆみやかぶれなどを引き起こす可能性があります。

そのため、肌着やタオル、シーツなど肌に触れるものには、木綿やシルクなどの天然素材のものを選ぶと、肌への刺激を少なくできるのでおすすめです。また、こうした日常的に使う布類はこまめに洗濯をして、清潔にしておくことも大切です。

室内の乾燥に注意

肌の乾燥を防ぐためには、部屋の湿度にも気を配りましょう。

特に、乾燥しやすい冬場は気温も低いため、窓や扉を閉め切り、暖房を一日中付けっぱなしにすることが多くなりがちです。しかし、こうした状況では室内はさらに乾燥し、肌の乾燥も促進されてしまいます。

乾燥肌対策としては、まず部屋に加湿器を設置し、室内が乾燥しすぎないよう調整するようにしましょう。また、短時間でも良いので、こまめに窓や扉を開けて空気を入れ替えるようにすると、部屋の乾燥を防ぎ、なおかつ風邪やインフルエンザ対策にもなるのでおすすめです。

まとめ

今回は、高齢者の皮膚が乾燥しやすい原因と、今日からできる乾燥肌対策について解説しました。

高齢者は、若い頃よりも肌のバリア機能が低下するため、乾燥肌が起きやすくなります。しかし、適切にケアをすれば悪化を防ぎ、健康的な肌を保つことは十分可能です。

乾燥肌に悩んでいる高齢者の方は、ぜひこの記事を参考にして日々のスキンケアの見直しをしてみてください。

また、あまりに強い乾燥肌を起こしている場合は、自分でなんとかしようとせず、医師に相談してください。症状に合わせた保湿剤の処方や、乾燥肌を悪化させないための生活習慣などのアドバイスを受けることができます。