軽度認知障害(MCI)と認知症の違いは?原因や予防・対策方法まで解説

「軽度認知障害(MCI)と認知症の違いは?」「認知症に進行しないための予防・対策は?」こんなお悩みを解決できます。

身近な人で「最近、もの忘れが多くなってきた」と感じる方はいらっしゃいますか?

もしかすると、そのもの忘れは「軽度認知障害(MCI)」かもしれません。

軽度認知障害の時点で早期発見・対策できれば、正常のレベルに回復する人もいる※1ので、早めの対処が重要です。

この記事の前半で、「軽度認知障害と認知症の違い、早期発見するポイント」について、後半で「認知症に進行しないための予防・対策方法」について紹介するので、ぜひ参考にしてください。

※1 引用:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について」

軽度認知障害(MCI)と認知症の違い

出典:厚生労働省「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」

軽度認知障害とは、「認知症と診断できない健常者と認知症の中間にあたるグレーゾーン」のことです。

記憶力や注意力など軽度の認知機能の低下が見られますが、日常生活への影響はほとんどないことが特徴です。

一方、認知症は記憶力だけでなく、「時間や場所が認識できない」「人の気持ちを配慮できない」などのさまざまな症状が現れ、自立した日常生活が困難となります。

認知症の症状

認知症で現れる症状は、以下のとおりです。

症状 概要
記憶障害 最近の記憶や出来事、行動を忘れる
見当識障害 時間や場所、人物など周囲の状況を正しく認識する能力が低下する
注意障害 注意力を維持したり、振り分けたりする能力が低下する
実行機能障害 計画を立て適切に実行する能力が低下する
失語 言語を理解したり、表出したりする能力が低下する
失認 正しく知覚したり、道具を適切に使用したりする能力が低下する
社会的認知機能低下 人の気持ちに配慮したり、表情を適切に把握したりする能力が低下する

認知症まで進行すると上記症状が現れ、自立した日常生活を送ることが難しくなります。

軽度認知障害(MCI)の原因

軽度認知障害の原因として最も多いのは、「アルツハイマー病」によるものとされています。

アルツハイマー病の原因は完全には解明されていませんが、脳に有害なタンパク質(アミロイドβ)が蓄積することで、徐々に脳が萎縮するのではないかと言われています。

また、その他にも遺伝や環境および生活習慣などの様々な因子が絡み合っていると考えられます。

軽度認知障害は治る?

出典:厚生労働省「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」

軽度認知障害(MCI)では、「1年で約5〜15%の人が認知症に移行する一方で、1年で16〜41%の人は健常な状態になる」ことがわかっています。

そのため、早期発見・対策することで、健常な状態への回復や認知症への移行を遅らせることが期待できます。

【早期発見が重要】軽度認知障害(MCI)のセルフチェック

チェックリスト

「軽度認知障害かもしれない」という方は、以下の項目に当てはまるものがないか確認してみましょう。

  • もの忘れの自覚がある
  • 友人と会う約束をしたが、時間を忘れた
  • 探し物をすることが多くなった
  • 外出が面倒になってきた
  • 言葉がすぐに出てこないことがある
  • 買い物に出かけたが、何を買うのか忘れる
  • 同時に2品以上の料理を作ると、手順などでミスが起こる
  • 心配で眠れないことがある

上記は、軽度認知障害で現れやすい症状です。

当てはまるものが多いほど、軽度認知障害の可能性があります。

軽度認知障害が疑われる場合は、かかりつけ医に相談しましょう。

認知症に進行しないための予防・対策方法5選

ここでは、認知症に進行しないための予防・対策方法を5つ紹介します。

  • 運動する
  • バランスのいい食事を摂る
  • 6〜8時間の睡眠をとる
  • コミュニケーションをとる
  • 趣味をつくる

以下で、1つずつ解説していきます。

運動する

認知症にならないためには、「運動すること」からはじめましょう。

なぜなら、「運動週間がない方は、運動週間がある方(週2〜3回)以上と比べて認知症になるリスクが1.82倍である※1」などの報告があるからです。

具体的には「ウォーキング(早歩き)」がおすすめです。

厚生労働省は、「ウォーキングよりハードな運動(早歩きなど)を週3回以上継続している方は、運動習慣のない方(週1日以下)に比べて50%も認知症になりにくい」と報告しています。

早歩きではなく、散歩程度の運動でも週3回以上続けることで、運動週間がない人に比べて33%認知症になりにくいことがわかっています。

短い時間・距離からでもお散歩をはじめてみましょう。

※1 引用:厚生労働省「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」

バランスのいい食事を摂る

バランスの良い食事

認知症にならないためにさまざまな食品を摂取し、バランスのいい食事を摂りましょう。

理由は、「いろいろな食品を摂取している人ほど栄養状況は良好であり、認知機能低下が抑制された※1」という報告があるからです。

また、国立長寿医療研究センターは、以下の食べ物が認知症となるリスクを軽減できると報告しています。

  • 大豆
  • 大豆食品(豆腐や納豆など)
  • 野菜
  • 藻類
  • 牛乳(乳製品)

これらの食品を多く摂取するのではなく、さまざまな食事をバランスよく摂取し、認知症を予防しましょう。

6〜8時間の睡眠をとる

出典:厚生労働省「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」

認知症の対策として、睡眠も重要です。

その理由は、「睡眠時間が5時間未満の場合、認知症のリスクが高くなる」という報告があるからです。

たとえば、アルツハイマー型認知症の場合、アミロイドβが脳内に蓄積することが発症の原因といわれています。

しかし、睡眠中にアミロイドβは排出されるため、しっかり睡眠をとることで認知症のリスクを軽減できます。

6時間以上8時間未満は睡眠時間を確保しておくといいでしょう。

コミュニケーションをとる

コミュニケーション

人とコミュニケーションをとることは、認知症の予防になります。

なぜなら、コミュニケーションをとることで、脳のさまざまな機能が活性化されるからです。

たとえば、人と会話するだけでも、以下を同時に脳は処理します。

  • 話を聞く
  • 話の内容を理解する
  • 話の内容から自分の発言を考える
  • 話す言葉を選ぶ
  • 相手の反応をみる

電話やメール、ビデオ通話だけでも脳の機能は活性化されるので、週1回以上は誰かとコミュニケーションをとりましょう。

趣味を作る

認知症予防のために、趣味をつくるのも効果的です。

とくに以下は、認知機能低下の抑制につながると言われているのでおすすめです。

  • 音楽(楽器やダンスなど)
  • 芸術
  • ボードゲーム

趣味活動は複数人で行うことによって、社会的交流や外出の機会を作れるため、認知症予防が効果的に行えます。

また、ダンスなど体を動かす趣味は、運動効果も得られるのでおすすめです。

まとめ|軽度認知障害(MCI)は早期発見が重要

この記事では、認知機能障害と認知症の違いについて解説しました。

軽度認知障害とは、「認知症と診断できない健常者と認知症の中間にあたるグレーゾーン」のことで、認知症に移行する前に発見し、対策することが重要です。

厚生労働省は、1年で16〜41%の人は健常な状態になると報告しているため、「軽度認知障害かもしれない」と疑われる場合は、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。

また、運動や睡眠、食事などによって、認知症への移行を予防できるので、ぜひ実践してみてください。