高齢者の体重減少への対策5選|元気で食べているのに痩せる原因や体重を増やす具体的な方法を解説

高齢者は食べているのに体重減少が続く方もいます。元気なのに痩せていく様子を見て「老衰が近づいているのか」と不安になるのではないでしょうか。

この記事では、高齢者が食べていても痩せる原因や、体重を増やすために自宅でできる具体的な対策法を解説します。受診の目安やほかに観察すべきポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

高齢者が元気で食べているのに痩せる原因

高齢者が元気で食べているのに痩せる原因

食べているのに高齢者の体重が減少していく原因には、老化による身体的な機能低下のほか、異変が潜んでいる可能性もあります。まずは、それぞれの原因を確認しましょう。

筋肉量が減少しているため

筋肉量が少ない高齢者は疲れやすく、さらに活動量が減ります。動かないと消費エネルギーも減少するため、少ない食事量でも元気に動くことが可能です。

足の筋肉量でみると、衰えは20~30歳ころから始まり、70歳ころで若い年代の30%ほどになるといわれています。食べていても体重減少がみられる場合、実際は必要な栄養が足りていない可能性があります。

消化吸収機能が低下しているため

老化により胃腸の消化吸収機能が低下すると、食物を体内で処理しきれなくなります。高齢者が食欲の低下を自覚できない場合、胃もたれや胃痛で訴えるケースもあります。

臓器の病気に罹患している可能性があるため

高齢者の体重減少の裏には、病気が隠れている可能性もあります。代表的な疾患には、胃癌や膵癌などの悪性疾患、胃・十二指腸潰瘍や慢性膵炎、肝硬変などの良性疾患が挙げられます。

体重減少に加えて以下の症状がみられる場合は、医師に相談しましょう。

  • 発熱
  • 嘔吐、下痢、腹痛
  • 頭痛
  • だるさ
  • 嚥下障害(飲み込みづらさ、むせ)

不安な方は、ぜひメドアグリケアにご相談ください。メドアグリケアは関東地方や中部地方で診療所を展開しているグループで、訪問看護などもご利用いただけます。

高齢者の体重減少による5つの危険性

高齢者の体重減少による5つの危険性

高齢者の体重減少を放置すると、以下5つの危険性があります。

体重減少は、身体と心が弱くなり要介護になる可能性のある「フレイル」の判断基準のひとつです。以下の記事も参考にしてください。

〈関連記事〉フレイルとは?簡単チェックや予防方法について解説

免疫力が下がり感染症にかかりやすくなる

適正体重は免疫力の維持に重要で、痩せすぎるとさまざまな免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。

低栄養の状態で多くみられる感染症は、肺炎や細菌性・ウイルス性の下痢、インフルエンザなどです。高齢者の感染症は重篤になる場合もあります

体力が下がり転倒リスクが上がる

体重減少によって筋力や体力が低下すると、転倒リスクが高くなります。高齢者は骨も弱くなる傾向があるため、転倒で骨折する方もいらっしゃいます。

厚生労働省の2022年国民生活基礎調査によると、転倒・骨折は介護が必要となった原因の第3位です。治療中の活動制限が、さらなる筋力低下や関節のかたまりを引き起こします。

嚥下障害が起きやすくなる

体重減少によって口や舌の筋力も低下しやすく、スムーズに食事が飲み込めなくなります。噛み合わせの悪さや飲み込みづらさを感じたり、むせたりすることもあるでしょう。

食べづらさは食事も進みづらく、低栄養からさらに体重減少と、悪循環に陥ります。高齢者がむせる原因については、以下の記事も参考にしてください。

〈関連記事〉高齢者がむせる原因とは?|予防策まで解説

認知機能の低下リスクがある

高齢者の認知機能を維持するためには、体重の変動が少ないほうがよいとされる研究結果があります。栄養状態の評価として、血液検査では以下の3つで判断できます。

  • 赤血球数:鉄分を示す
  • HDL(善玉)コレステロール値:脂質を示す
  • アルブミン値:タンパク質を示す

体重減少が続くと認知症の症状悪化につながる可能性もあるため、必要な栄養の摂取を心がけましょう。

浮腫(むくみ)が起きやすくなる

人間の身体は通常、濃度の低い方に水が移動して水分量が一定に保たれていますが、体重減少は低栄養により浸透圧のバランスが崩れ全身がむくみやすくなります。

浮腫が起きた皮膚は刺激に弱く傷ができやすくなるほか、足に生じると歩行がしにくくなり転倒のリスクにつながります。高齢者の浮腫に対する改善・予防方法を解説した以下の記事も参考にしてください。

〈関連記事〉高齢者の浮腫(むくみ)の原因は?改善・予防する方法まで解説

高齢者の体重を増やすための対策法5選

高齢者の体重を増やすための対策法5選

高齢者の標準BMIは「65歳以上で20.0~24.9」「70歳以上で21.5~24.9」です。BMI(Body Mass Index)とは体格を表す指標で、体重と身長からやせや肥満を判定するのに用います。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

このBMIを目標にしつつ、まずは体重を維持させるところから始めましょう。対策の具体例を解説します。

エネルギーとタンパク質が多く含まれる食品を摂る

高齢者の体重を増やすためには、体力に関わるエネルギーと筋肉量を保つためのタンパク質が重要です。

高齢者に必要な1日のエネルギー量と、推奨されるタンパク質量は以下のとおりです。エネルギー量は高齢者施設で自立に近い状態で過ごす方を基準としています。

年齢 エネルギー量 タンパク質量
65~74歳 男性 2,050kcal
女性 1,550kcal
男性 60g
女性 50g
75歳以上 男性 1,800kcal
女性 1,400kcal
男性 60g
女性 50g

とはいえ、高齢者は多くの量を食べられません。そのため、高カロリーかつ高タンパクの以下の食品を取り入れましょう。

  • 牛乳
  • チーズ
  • サバ缶、ツナ缶

間食で食事回数を増やす

高齢者は1回で食べられる量が少ないため、間食で食事のタイミングを増やしましょう。市販のお菓子などよりも、バナナやゆで卵などをすすめてみてください。

高カロリー・高タンパクで飲み込みやすいプリンもおすすめです。

プロテインや栄養補助食品を取り入れる

プロテインや栄養補助食品を取り入れると、手軽に体重減少の対策ができます。プロテインにはゼリーや粉末・バータイプがあり、栄養補助食品には液体やゼリー・粉末タイプがあります。

味のバリエーションも豊富にあるため、好みに合わせて飽きずにすすめることが可能です。ドラッグストアでの購入もできるほか、医師によりタンパク質を主体としたドリンクタイプの栄養剤の処方もできます。

楽しく食事がすすむ環境を整える

摂取できる食事量を増やすためには、高齢者が楽しく食事がすすめられる環境を整える工夫が必要です。1人での食事は食が進まなくなります。

食事がすすむよう、以下のような工夫を取り入れてみてください。

  • 好きなメニューをだす
  • 外食する
  • 家族や友人と一緒に食べる

適度に運動を取り入れる

適度な運動は体力や筋力低下を防ぎ、消費エネルギーの増加から食欲増進につながります。また、定期的に運動している方は生活習慣病の羅患率や死亡率が低いうえ、精神的にも安定しやすいとされています。

高齢者で推奨される運動量は「1回30分以上・週2回以上・1年以上」です。特に高齢者は足腰が弱りやすいため、ウォーキングなどの歩行運動やストレッチなどがおすすめです。はじめは無理せず、散歩やマッサージから始めてもよいでしょう。

高齢者の体重減少で受診するタイミング

高齢者の体重減少で受診するタイミング

高齢者は6ヵ月間で2~3kg以上の意図しない体重減少があった場合、フレイル*の判断基準に該当します。
*フレイル:身体と心が弱くなり要介護になる可能性のある状態

さらに、高齢者で6~12ヵ月で5%以上の体重減少があると、その後の死亡リスクが2.2倍増加したとされる研究結果もあります。

体重減少に併せて、ほかの症状がみられた場合は該当する診療科目で診察を受けましょう。何科を受診すべきか迷う場合は、かかりつけ医や地域の診療所に相談してください。

まとめ

高齢者の体重減少は身体的な機能低下によるもののほか、病気が隠れている可能性もあります。低栄養の状態になると、体力や免疫力・認知機能の低下など、二次的な影響がでてきます。

元気な状態で過ごすためにも、食事には効率的に必要な栄養を摂取できる食品を取り入れましょう。加えて、環境を整えることも大切です。

体重減少の許容範囲を理解し、不安なときには医師に相談してください。

メドアグリケアは地域を愛し・愛されることを目指しており、最期まで責任をもって患者様とご家族に寄り添い、支えます。不安がある際はぜひご相談ください。