認知症の徘徊対策5選|外出したがるのを放置できずお困りのご家族へ、家族だけで探さないなど具体策を解説

認知症が進行すると、日常生活に支障を来たす周辺症状のひとつ「徘徊」に悩まされるご家族も多いことでしょう。

認知症の徘徊が原因で行方不明となった人は、令和4年度のみで18,709人。過去5年間でも平均17,000人前後で推移しており、それだけご家族の負担が大きいことがわかります。

この記事では外出したがるのを放置できずお困りのご家族へ、認知症の徘徊対策を5つ紹介します。具体的な予防法から行方不明時の対応策まで解説するので、ぜひ参考にしてください。

認知症で徘徊が起きる要因

認知症で徘徊が起きる要因

認知症の徘徊には、身体的・心理的・環境的要因が大きく関わっています。

徘徊対策として適切な関わり方を見つけるために、まずは徘徊につながる要因を再確認しましょう。

身体的な要因

認知症の方は物事を計画的に進めることが難しくなったり、判断力が低下したりするため、身体的な不調が徘徊の引き金になる場合があります。

「なぜ不快なのか、どうすれば解消できるのか」を自分で判断できず、解消したい気持ちから行動が落ち着かなくなる可能性があるでしょう。

認知症の方に落ち着かない様子が見られた場合、まずは以下の状況に陥っていないか確かめてみてください。

  • お腹が空いていないか
  • 喉が渇いていないか
  • トイレに行きたい様子はないか
  • おむつに失禁していないか
  • 便秘をしていないか

身体的な要因の解消は徘徊対策につながります。不快な状況を取り除けるよう、定期的に健康チェックしたり医師に相談したりして体調を整えることが大切です。

心理的な要因

認知症の方は以下の心理的要因でも、徘徊につながります。

  • 現在の自分を受け入れられず認識が過去の自分に戻る
  • 思考や判断力の障害で現状を再確認したい
  • 不満・不安・ストレスがある

過去の習慣を再び始めるような行動は「回帰型」と呼ばれ、自分が活躍していた頃を思い出して徘徊します。「仕事に行かなければ」などの言葉が見られた際には、落ち着けるよう「今日、会社はお休みですよ」など、認知症の方の世界観に合わせた言葉がけをするとよいでしょう。

また、認知症の方は道順や今いる場所が分からなくなり、現状を把握するために徘徊している可能性もあります。

不安やストレスなどの心理的負担も認知症の徘徊頻度に大きく関わるため、伝えるときは寄り添った印象を与えることが大切です。強く否定したり、静止したり注意をすると徘徊がひどくなる可能性もあります。

環境的な要因

認知症の方は環境の変化があると順応しにくく、居心地の悪さから徘徊につながる可能性があります。

環境的な要因による徘徊の場合には、以下のようなケースが考えられるでしょう。

  • 持ち物の場所を探している
  • 自宅に帰ろうとしている
  • 家族を探しに行こうとしている

認知症が進行すると自宅や家族を忘れることもあります。自分の安心できる居場所に戻ろうと、徘徊につながります。

「認知症」と「もの忘れ」の違いが分かりづらい方は、以下の記事も参考にしてください。

〈関連ページ〉「認知症」と「もの忘れ」の違いは?|予防・進行させないために必要なことも解説

要因が分からずお困りの方は、ぜひメドアグリケアにご相談ください。介護や医療の専門職がご本人との関わりや普段の行動から、要因を見つけるお手伝いをいたします。

認知症の徘徊を対策しないことで起こるリスク

認知症の徘徊を対策しないことで起こるリスク

認知症の徘徊は繰り返されることで介護者にも負担になりますが、対策しなければ以下の状況に陥る可能性があります。

  • 転倒による外傷や骨折
  • 交通事故
  • 夏は熱中症、冬は低体温症
  • 最悪の場合、亡くなった状態での発見

令和4年度の認知症の徘徊による行方不明者18,709人のうち、死亡が確認された方は527人にのぼります。

認知症になると気温や危険な場所に対する判断力も低下するため、発見時間が遅くなるほど危険がともなうでしょう。

認知症の方を守りつつ介護者の負担を軽減するために、効果的な徘徊対策を取り入れる必要があります。

認知症の徘徊対策5選

認知症の徘徊対策5選

認知症の徘徊対策には医療やグッズ、生活習慣など多方面からのアプローチが重要です。おすすめの徘徊対策は以下の5つです。

1.処方されている内服などかかりつけ医師の指示を守る

内服薬など医師から処方されているお薬は「効かない、足元がふらつく」などがあっても自己判断で中断せず、かかりつけ医の指示を守ることが大切です。

落ち着きがない認知症の方によく用いられる内服薬は、抑肝散(よくかんさん)と呼ばれる漢方や抗精神病薬です。飲むことで睡眠パターンも整えられるとされていますが、効き始めるのに時間がかかる方もいます。

抑肝散は1ヶ月ほど、抗精神病薬は2週間ほどかけて評価することが推奨されているため、継続内服で徘徊対策への効果が期待できます。

ただし、副作用で困っている場合や内服が難しい場合には貼付薬などの検討もしてもらえますので、早めにかかりつけ医に相談してください。

2.玄関や鍵に工夫する

認知症の方が外へ出るとリスクも高くなるため、以下の方法で玄関や鍵に徘徊対策しておきましょう。

  • 鍵を新しくする、補助鍵を設置する
  • 鍵を届かない位置に設置する
  • ドアの前に荷物を置く
  • ドアにセンサーを取り付ける

鍵や障害物は外に出るまでの時間を稼ぐことができるため、徘徊対策に効果的です。

鍵を付け替えるのが負担な方は、穴を開けずに設置できる補助鍵を活用するのもよいでしょう。センサーは、小型で簡単に取り付けられる製品もあります。

3.徘徊対策グッズを取り入れる

徘徊対策に取り入れたいおすすめグッズは以下のとおりです。

  • GPS
  • 名札
  • ワイヤレスセンサー

GPSは持ち歩かなければ意味がありません。おすすめなのが徘徊専用のGPSで、製品のなかには杖などに付けられるお守りに入れるタイプや靴に入れるタイプもあります。

どの経路で移動したかも把握できるGPSなら、行動の予測もしやすいでしょう。

また、外に出たときのために、あらかじめ持ち物や衣類に名札を付けておくのもおすすめです。名札には名前や住所のほか、連絡先も記入しておいてください。

外に出る前に察知する方法には、ワイヤレスセンサーがあります。ワイヤレスセンサーには人感センサーとドアセンサーがあるため、玄関にドアセンサーを、室内に人感センサーを置くと動き出しをキャッチしやすくなります。

4.生活習慣を整え趣味や役割などを活用する

徘徊は体調不良や不眠が引き金になるときもあるため、徘徊対策するために生活リズムを整えましょう。

朝起きたら朝日を浴び、昼は趣味を見つけたり役割を与えたりして、何かに集中できるような環境をつくることが重要です。

デイサービスやデイケアを活用すると、家族の負担も軽減されます。検討する方は以下の記事も参考にしてください。

〈関連ページ〉デイサービスとデイケアの対象者の違いは?|利用目的や料金を比較!

5.徘徊につながらない対応をしておく

認知症の方が動き出したときには、適切な対応をしなければ徘徊への欲求が強く出る可能性があります。徘徊しそうなときには、以下の対応を取るのがおすすめです。

  • 動きたい目的を聞く
  • 感情的にならない
  • 自由に動いてもらう
  • 本人の気をそらす

徘徊するときには、何かしらの目的があります。そのなかに要因が隠れているため、まずは否定や制止をせずに目的を聞いてみましょう。

何度も徘徊を繰り返すと介護者もイライラしてしまいますが、感情的になると認知症の方にストレスが加わり、徘徊がひどくなる可能性があります。余裕があれば自由に動いてもらう、役割を与えて気をそらす、などの関わりをしてみてください。

認知症の周辺症状には徘徊のほかにも、暴言や暴力・介護拒否などがあります。以下の記事で詳しく解説しています。

〈関連ページ〉認知症で見られる周辺症状って何?中核症状との違いも解説

認知症で徘徊が起きたときの対応策

認知症で徘徊が起きたときの対応策

実際に認知症で徘徊が起きたときは、以下の方法で対応しましょう。

友人や近所の方に応援を依頼する

認知症の方が外に徘徊するとリスクがともなうため、1人で探さずにまずは応援を依頼してください。友人や近所の方なら徘徊している方の特徴を知っており、探しやすくなります。

一緒に探してもらうことで、ご自身も不安な気持ちを1人で抱え込まずにすむでしょう。

なじみのある場所を探してみる

徘徊の目的が「居場所を探している、昔の習慣どおりに動こうとしている」場合は、昔からなじみのある場所に向かうこともあるでしょう。

愛知県により2015年に始められた「徘徊高齢者の効果的な捜索に関する研究等事業」によると、認知症の徘徊者の発見場所は普段移動できる範囲が約40%となっています。

一概になじみのある場所で見つかるとはいえませんが、まずは可能性のある場所から探してみてください。なお、前頭側頭型認知症の方は同じ行動を繰り返す症状があるため、なじみのある場所で見つかる可能性があります。

警察に捜索願いを出して地域包括支援センターに相談する

日が暮れる夕方や夜間、真夏・真冬の徘徊、車通りの多い場所などの場合は、迷わずに警察署に捜索願いを出してください。警察官は危険な場所なども熟知しているうえ、家族より発見例が多い傾向があります。

捜索願いを出す際には写真と服装、身体的な特徴などを情報提供すると、さらに見つけやすくなるでしょう。

また、同時に地域包括支援センターに相談しておくと「高齢者の見守り・SOSネットワーク」により、地域の生活関連団体などが連携協力してくれます。

まとめ

今回は、認知症の徘徊対策について解説しました。

徘徊を繰り返す認知症の方には、動きたくなる目的を確認したうえで適切な対応をとることが大切です。とはいえ、対応しきれないときも多いため、あらかじめグッズで徘徊対策しておきましょう。

徘徊で行方不明になったときのために、相談する場所をリストにしておくと焦らず対応できます。

メドアグリケアでは、介護や医療の専門職が自宅での生活をサポートしています。徘徊で悩まれている方や介護の負担が大きいと感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。