高齢者の骨折|入院したらどうしたらいい?
高齢者に多い「骨折」ですが、状況によっては今後の生活に大きな支障を及ぼす可能性があります。もし骨折で入院したら何を準備したら良いのか、リハビリはどこで行えるのかなど、不安に感じる方も多いはず。
今回は骨折で入院した際の流れや準備しておくことなどを解説します。万が一に備えて、今から理解しておきましょう。
高齢者に骨折が多い理由
高齢者は骨折が多いですが、その理由は以下の通りです。
・骨粗しょう症により、骨が弱くなっている
・筋力が低下し、転倒しやすい
・皮下組織が減っている
では、それぞれ理由を見ていきましょう。
①骨粗しょう症により、骨が弱くなっている
骨粗しょう症とは、骨の強度が低下し、骨折のリスクが高くなる病気です。年齢を重ねると、骨粗しょう症になりやすいことがわかっています。日本の骨粗しょう症の有病者は1,000万人を超えており、ほとんどが女性です。
骨粗しょう症は検査をしないとわからないことが多く、診断がついていないまま生活している方も多いです。
骨を元通りにする薬はありませんが、骨の吸収を抑える薬・骨の形成(骨を作る)を助ける薬・吸収と形成の骨代謝を調節する薬を処方し、治療が進められています。
②筋力が低下し、転倒しやすい
高齢者に骨折が多い原因として、筋力の低下も挙げられます。下半身の筋力が低下すると、ちょっとした段差などで転倒することが増えます。転倒したまま起き上がれず、助けを呼べずに数日間寝たきりで過ごしていたという事例もあります。
日頃から運動を行い筋力を維持することや、転倒しないように自宅内の環境を整えるようにしましょう。
③皮下組織が減っている
年齢を重ねると、皮下組織が薄くなったり、皮下脂肪が少なくなります。そのため転倒した際に、骨を守るクッションが減ってしまい、骨折しやすくなります。
入院した時に準備すること
例えばご自身の両親が急に入院することになったら、何から準備したら良いかわからないという方は多いのではないでしょうか。入院したら準備しておいた方が良いものを紹介します。
・限度額適用認定証の申請
まずは限度額適用認定証の申請を行いましょう。
手術やリハビリをすると、医療費が高額になります。あとから申請すると自己負担限度額を超えた額が払い戻される「高額療養費制度」がありますが、一旦は全額自己負担しなければならず、高額な医療費の支払いが発生します。
限度額適用認定証を申請し、病院へ提出しておくと、1ヵ月の窓口でのお支払いが自己負担限度額までになります。
申請先はお持ちの保険証によって異なります。また自己負担限度額は、それぞれの収入によるため、詳細は申請窓口へ確認することをおすすめします。
ただし食事代や保険適応外分は、自己負担限度額とは別に請求されるため注意しましょう。
令和4年1月よりマイナンバーカードを保険証の代わりにすることも可能です。患者さんに同意を得た上で、病院がオンライン上で確認することができます。
マイナンバーカードを保険証として利用できる病院では、限度額適用認定証がなくても医療費が自己負担限度額でストップします。
・生命保険の準備
入院して手続きが必要になるのが、生命保険の申請です。いざ入院すると「どれくらい給付金が下りるのか?」「手続きに何が必要なのか?」など、何から手をつけて良いかわからないということも少なくありません。加入している制度によっては、入院日数や給付金の上限などが定められているので、事前に確認しておくことをおすすめします。
どこでリハビリできるの?
骨折後や手術をした場合、すぐに元の状態まで回復できず、リハビリが必要になることがあります。手術など治療を行う病院を「急性期病院」と言いますが、急性期病院では長期間のリハビリはできません。そのためリハビリができる病院へ転院する必要があります。
リハビリ先は以下の通りです。
・回復期リハビリ病棟
・地域包括ケア病棟
上記が挙げられます。それぞれ詳しく解説していきます。
・回復期リハビリ病棟
回復期リハビリ病棟は、元の状態までの回復を目指して、リハビリを行う病棟です。1日3時間までリハビリを行うことができ、病棟の中では一番多くリハビリができます。
ただし入院できるのは、脳疾患や大腿骨骨折など、国で定められている疾患に当てはまる方です。疾患によって、入院期間も定められています。
骨折の場合、大腿骨や骨盤骨折の方が対象になるため、骨折部位によっては対象にならない可能性があります。
疾患 | 入院上限 |
脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント手術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、 多発性硬化症、腕神経叢損傷等の発症後若しくは手術後の状態又は義肢装着訓練を要する状態 | 150日 |
高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷 | 180日 |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節若しくは膝関節の骨折又は二肢以上の多発骨折の発症後又は手術後の状態 | 90日 |
外科手術又は肺炎等の治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後又は発症後の状態 | 90日 |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節若しくは膝関節の神経、筋又は靱帯損傷後の状態 | 60日 |
股関節又は膝関節の置換術後の状態 | 90日 |
・地域包括ケア病棟
地域包括ケア病棟でも、在宅復帰を目指してリハビリをすることができます。以下の方が対象になります。
・急性期治療は終わったが、しばらく経過観察が必要な方
・在宅復帰・社会復帰にリハビリテーションまたは療養が必要な方
・在宅・介護施設等での療養中に症状が急に悪くなった方や、集中治療の必要はないが入院が必要な方
・介護疲れによる一時休息など、レスパイトが必要な方
地域包括ケア病棟は、疾患による制限はありません。回復期リハビリ病棟で対象にならなかった方は、地域包括ケア病棟でのリハビリ継続ができる可能性があります。
疾患に関わらず入院期間は60日のため、回復期リハビリ病棟と比べると、入院期間は短くなります。
どちらの病棟も治療が落ち着いた段階で、入院ができる病棟です。
転院の際は、主治医の診療情報提供書などを提供し、受け入れを確認してもらう必要があります。入院している病院にいる医療ソーシャルワーカーへ相談してみましょう。
実際の事例を紹介
Aさん(女性・80代)は、夫が数年前に他界してから一人暮らしです。
ある日、自宅でカーペットに足がひっかかってしまい転倒。近くに住む娘が動けなくなっているところを発見し、病院に運ばれました。
右大腿骨頸部骨折の診断で手術を行いましたが、まだ一人で歩くことができず、リハビリが必要な状態であり、回復期リハビリ病棟がある病院へ転院しました。
転院後リハビリを続けましたが、歩行器などを使わないと歩けない状態。
入院時に介護保険を申請していたため、Aさん・家族は介護老人保健施設で、もう少しリハビリを続けることにしました。
その後自宅での介護サービスの準備や自宅環境の整備を行い、Aさんは無事自宅へ退院することができました。
【ポイント】
・介護老人保健施設は、要介護1〜5の方が入所できる施設。回復期リハビリ病棟より、リハビリ時間は短いが、自宅へ帰ることを目指してリハビリができる施設。
・介護保険を申請しておくことで、施設入所や在宅サービスを利用できる。
高齢になると、骨折や入院のリスクが高まります。いざ入院となった時に慌てないためにも、事前に必要なものや、今後の流れを理解しておきましょう。