高齢者がかかりやすい感染症とは?しっかり対策しよう

高齢者は感染症にかかりやすいです。それだけでなく、かかった際に重症化してしまうリスクも高いため、日頃からの感染予防が重要です。

そこで今回は、高齢者がかかりやすい感染症、高齢者が感染症にかかりやすい理由、そして高齢者の感染予防について解説します。

 

高齢者がかかりやすい感染症8つ

まず、高齢者がかかりやすい感染症を8つ紹介します。

 

インフルエンザ

インフルエンザは、秋の終わり頃から冬にかけて流行する感染症で、インフルエンザウイルスに感染することで発症します。感染経路は飛沫感染と接触感染です。急な発熱、全身倦怠感、咽頭痛、関節痛、頭痛などが主な症状です。しかし、高齢者の場合は高熱が出ない場合もあるため注意が必要です。治療は抗インフルエンザウイルス薬にて行われます。

 

通常は4~5日程度で回復しますが、高齢者の場合は気管支炎や肺炎、心不全などの合併症を発症しやすく、重症化のリスクがあります。

 

新型コロナウイルス感染症

わが国においても2020年から現在にいたるまで感染拡大が止まらない新型コロナウイルス感染症。感染経路は飛沫感染と接触感染、空気感染であるとされています。発熱や呼吸器症状、頭痛、全身倦怠感、味覚障害、嗅覚障害などの症状を呈しますが、高齢者の場合は症状が典型的でないこともあります。

抗ウイルス薬による治療が行われますが、高齢者の場合は、インフルエンザと同様に肺炎などの合併症を発症しやすく、注意が必要です。

 

肺炎(肺炎球菌など)

肺炎は、日本の死因の5位であり、毎年多くの人が肺炎で亡くなっています。高齢者の肺炎の原因はウイルスや細菌感染、誤嚥などさまざまですが、なかでも肺炎球菌による肺炎は重症化しやすいです。発熱、呼吸困難、たん、咳などの症状を引き起こしますが、高齢者の場合は発熱を伴わないことや、咳やたんが出ないこともあります。しかし、症状が目立たなくても急速に病態が進行していくことがある点に注意が必要です。

 

感染性胃腸炎

冬のシーズンに流行しやすいノロウイルスなどによる感染性胃腸炎も、高齢者が注意したい感染症の一つです。発熱、嘔吐、下痢、食欲不振などの症状が現れ、苦痛を伴います。ウイルスが体外へ排出されるまで数日~数週間程度かかります。その間、嘔吐や下痢により脱水に陥りやすいため水分補給が大切です。しかし、高齢者はもともと体内に蓄えられている水分量が少ないことから、脱水症状を引き起こしやすく、点滴による水分補給が必要になることもあります。

また、高齢者の場合は吐物を誤嚥し誤嚥性肺炎を引き起こすこともあるため、注意が必要です。

 

尿路感染症

尿路感染症も高齢者によくみられる感染症で、膀胱や尿道に細菌が感染することで起こります。通常、尿道や膀胱は無菌状態ですが、加齢に伴い尿路の機能や抵抗力が低下することにより、細菌が侵入し増殖する状態です。とくに、オムツを装着している高齢者の場合は陰部が不潔になりやすく、尿路感染発症のリスクが高まります。発熱や残尿感、排尿時痛、腰背部痛などが主な症状で、抗生剤による治療が行われます。

発症に気がつくのが遅れたり、状態の悪化が早い場合には、炎症が腎盂にまで達して腎盂腎炎となり、敗血症に至り重篤な状態に陥ることもあります。

 

帯状疱疹

帯状疱疹は、50歳を過ぎた頃から免疫力の低下に伴って発症しやすい感染症です。水痘(水ぼうそう)と同じウイルスにより発症する感染症で、このウイルスは日本人成人のうち90%以上もの人の体内に潜伏しており、80歳になるまでの間に3人に1人の割合で発症することがわかっています。身体の左右どちらかの神経に沿って、ビリビリとした痛みを伴う発疹と水ぶくれが帯状に現れ、治療には、抗ウイルス薬や痛み止めが用いられます。

高齢者においては痛みが強くなりやすく、発疹の症状が治まった後にも痛みが長引くことが特徴です。

 

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症)

黄色ブドウ球菌は、人の皮膚や粘膜などに常在している細菌であり、本来は悪さをすることはありません。しかし、抗生物質に対して耐性をもってしまったものはMRSAとよばれ、人に悪さをします。高齢者など抵抗力が弱い人が感染してしまうことで、肺炎や敗血症、感染性心内膜炎などの重篤な病態に陥ることがあり、注意が必要です。

 

結核

結核では、結核菌が空気感染することで体内に侵入し、肺で増殖します。発熱や咳、痰、倦怠感、寝汗などの症状が現れ、抗結核薬による治療を行います。早期に発見し適切な治療がされないと、結核菌が血液やリンパ液により全身に運ばれ、命に関わる状態に陥ることもあります。

高齢者の場合、再感染にも注意が必要です。昔感染した結核菌が体内に残っており、加齢による免疫力低下に伴い菌が再び活性化してしまうことがあるからです。

 

高齢者が感染症にかかりやすい理由

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高齢者が感染症にかかりやすいのは、加齢に伴う免疫力の低下が関係しています。これには、免疫に関わる細胞である白血球の数の減少や機能の低下、脾臓やリンパ節などの白血球の働きを助ける臓器の機能低下などが影響しています。

また、高齢者の生活環境が感染症発症のトリガーとなっている可能性も。とくに、高齢者が集団で過ごす高齢者施設やデイサービスなどでは、感染が拡大しやすく、集団感染も問題となっています。

 

高齢者の感染予防法

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高齢者は、感染症にかかりやすく、また重症化もしやすいため、本人や家族が日頃から感染予防対策を徹底することが重要です。高齢者に大切な感染予防行動を5つ紹介しますので、生活に取り入れてみてください。

 

手洗い・うがい・咳エチケットの徹底

あらゆる感染症予防の基本は、手洗い・うがいの徹底です。ウイルスや細菌は、家庭内でも、高齢者施設などにおいても、高齢者がよく触れる場所に潜んでいます。外出後や排泄後、食事前には「正しい」手洗いを徹底しましょう。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い普及しているアルコール消毒も効果的ですが、皮膚が弱い高齢者の場合は肌荒れが悪化してしまうことがありますので、状況に応じた使用をおすすめします。

また、高齢者のなかには咳エチケットの徹底が難しい人もいます。その場合には家族や施設職員による配慮が必要です。マスクの装着を徹底する、ソーシャルディスタンスを確保するなど、工夫しましょう。

 

バランスのよい食生活

感染予防には、栄養をしっかりと摂取することも大切です。高齢者になると、活動量の低下などに伴い食欲が低下してしまっている人もいることでしょう。しかし、食事摂取量不足や食生活の乱れは、免疫力をさらに低下させてしまうことが明らかになっています。

1日3食、バランスのよい食事摂取を心がけましょう。お腹が空いていなくても、頑張って食べ物を口にすることが大切です。

また、免疫力を高めるには腸内環境を整えることも大切です。ヨーグルトなどの乳酸菌を多く含む食品や、味噌・納豆・キムチなどの発酵食品、食物繊維を積極的に摂取し、腸内環境を整えましょう。

 

適度な運動

適度な運動により、体力をつけることも大切です。体力の低下やストレスは、感染症発症のリスクがより高まります。反対に、体力があれば、万が一感染症になってしまったとしても、回復が早くなったり重症化を防げたりすることがあります。

ストレス発散やリフレッシュのためにも、生活に適度な運動を取り入れましょう。

 

身体の清潔を保持する

感染症予防においては、身体の清潔を保持することも重要です。冬場は入浴がおっくうになりがちですが、できるだけ毎日入浴し、身体の清潔を保持しましょう。とくに、陰部の清潔保持、口腔ケアは重要です。本人によるケアが困難な場合は、家族や介護者がしっかりとケアしていきましょう。

 

予防接種を受ける

高齢者がかかりやすい感染症のなかでも、新型コロナウイルス感染症や肺炎球菌、帯状疱疹などには予防接種があります。予防接種を受けたからといって発症を100%防げるわけではありませんが、万が一発症してしまった場合でも重症化を防げる可能性が高まります。

 

今回は、高齢者が感染症にかかりやすい理由や感染症の種類、予防方法について解説しました。高齢者がかかりやすい感染症は、いずれも重症化のリスクがあり、ときには命に関わる重篤な状態に陥ってしまうこともあります。そのため、日頃から感染予防行動を徹底することが何よりも大切です。

 

高齢者本人も、周囲の人も今一度感染予防行動に対する意識を高め、感染症を予防していきましょう。