【人生100年時代】健康寿命を伸ばす方法は?
世界屈指の長寿国として知られる日本。しかし、「平均寿命」と「健康寿命」に大きな差があることが問題視され、健康寿命を延ばすための取り組みがなされています。
そこで今回は、健康寿命について、平均寿命との違いや健康寿命を延ばすための方法を解説します。
健康寿命とは?平均寿命との違い
健康寿命とは、集団の健康状態を表す健康指標の一つです。介護や人の助けを借りずに身の回りの動作が一人で行え、健康的な日常生活が送れる期間をさします。0歳における平均余命のことをさす「平均寿命」とは異なり、健康に暮らせているかどうかを表す指標です。
厚生労働省の2020年版厚生労働白書によると、日本では男性、女性ともに、平均寿命も健康寿命も年々延びていることがわかります。男性においては、2001年に78.07年であった平均寿命が2016年には80.98年に、また69.4年であった健康寿命は72.14年にまで延びています。女性においても、2001年に84.93年であった平均寿命が2016年には87.14年に、72.65年であった健康寿命が74.79年に、年々延び続けています。
この結果は一見良いことのように思えますが、健康寿命と平均寿命両者の間に大きな差があることが問題なのです。単純計算すると、健康寿命と平均寿命との間には、男性では8年、女性では13年程度もの差があることがわかります。つまり、その間の年数は、何かしらの制限を受けたり、介護を必要としたりしながら生活しているということです。
健康寿命と平均寿命の差を縮め高齢者がより健康的に長生きするためには、社会的、そして個人的な努力が欠かせません。
健康寿命を延ばすメリット
まず、健康寿命を伸ばすメリットについて理解しましょう。
楽しく長生きできる
健康寿命が延びることの最大のメリットは、楽しく長生きできることではないでしょうか。
どれだけ長生きできても、心身の健康が確保されず寝たきりの状態や、生活に不自由がある状態では、高齢者自身が「楽しい」と感じることが難しいことも多いはずです。何年もの間、自由に身体を動かしたり好きなことをしたりできずに過ごすことは、苦痛を伴うでしょう。
充実した人生を送れる
健康寿命が延びれば、人生の充実感や達成感も向上することでしょう。健康寿命が延びれば、それだけ自分で好きなことをする時間が増えます。趣味や家族との生活を存分に楽しみ、充実した日々を送れることでしょう。
医療費の削減
健康寿命が延びることは、医療費の削減にもつながります。高齢者の医療費は基本的には1割負担であるため、国の予算を大きく圧迫しているのが現状です。しかし、高齢者が健康的になり受診の頻度や医療への依存が減少すれば、その分だけ国の予算が確保できるようになり、国民が暮らしやすい世の中を作っていくことも可能かもしれません。
健康寿命を延ばすためにできる10のこと
ここからは、健康寿命を延ばすためにできる10のことについて解説します。
禁煙する
喫煙は、生活習慣病やあらゆる疾病の原因になりかねません。喫煙は、肺への負担はもちろんのこと、循環器系の疾患や認知症に罹患するリスクが高まることも報告されています。また、国立がん研究センターの報告によると、喫煙者は、非喫煙者より10年程度も余命が短くなることもわかっています。ぜひ、禁煙しましょう。
飲酒習慣を見直す
過度な飲酒も、生活習慣病や肝硬変、膵炎、消化器疾患などさまざまな疾病の引き金になる可能性があります。飲酒の習慣がある人は、節度ある適度な飲酒量を心がけましょう。厚生労働省が推進する「健康日本21」によると、1日あたりの適度な飲酒量は、純アルコール20gであるとされています。純アルコール20gは、ビールであれば500mlを1缶、日本酒であれば1合、ワインであればグラス2杯弱程度となります。
食生活を見直す
健康寿命を延ばすためには、バランスの良い食生活が欠かせません。私たちの身体は、日々口にした物によって作られていることを意識しましょう。
塩分や脂質の過剰摂取は、高血圧やメタボリックシンドローム、脂質異常症などの生活習慣病のリスクを引き上げます。また、糖質の過剰摂取は糖尿病につながることがあります。
一方で、タンパク質やビタミン群の摂取は不足しがちです。必要な栄養素が摂取されないと、筋力の衰えやエネルギーの枯渇により老化がすすんでしまう原因となります。
「摂りすぎ」「摂らなさすぎ」に注意し、バランスの良い食事を1日3食しっかりと摂取しましょう。
運動習慣をつくる
運動習慣も非常に重要です。運動により、血圧や血中コレステロール値、血糖値が下がることがわかっており、生活習慣病の予防につながります。また体力維持、筋力維持の視点からも運動は大切です。骨や筋肉を丈夫にすることで、骨粗しょう症や骨折の予防となり、健康寿命を延ばすことにつながります。
いきなりハードな運動を始めるのは身体的な負荷が大きく危険であるため、まずは散歩やウォーキングなど、簡単に取り組める運動から始めてみましょう。
歯の健康を守る
歯や口腔内の健康にも気を配りましょう。健康な歯がなくては、食べ物をしっかり咀嚼できません。そればかりでなく、ある調査によると、歯が不足しているにもかかわらず義歯を使用していない人や歯医者に通っていない人は、歯が20本以上残っている人に比べ、認知症の発症リスクが1.9倍も高いことが報告されています。
また、口腔の衛生保持は、肺炎の予防にもなります。日々の歯みがきはもちろん重要ですが、かかりつけの歯科医をもち、定期的に専門的なケアをしてもらうのも忘れないようにしましょう。
健康診断や予防接種を受ける
病気の早期発見のために、定期的に健康診断を受けましょう。早期発見、そして早期治療ができれば、後遺症が残ったり寝たきりになってしまったりといった事態を防げ、疾病を克服したうえで健康的に長生きできる可能性が高まります。
また、肺炎球菌や帯状疱疹、インフルエンザや新型コロナウイルスなどに対しては、予防接種により発症を予防したり、重症化を防げたりする可能性があります。かかりつけ医と相談しながら、必要に応じて取り入れると良いでしょう。
質の良い睡眠を確保する
質の良い睡眠は、生活習慣病のリスクを減少させることが明らかになっています。高齢者は、日中の活動量の低下や加齢に伴う体内時計の変化、ホルモンバランスの乱れなど、さまざまな要因によって睡眠の質が低下しやすい状態にあります。寝る前はテレビやスマートフォンを見ないようにする、日中は運動する、寝る直前の入浴は控えるなど、眠りの質を良くするための工夫を取り入れてみましょう。
体重をコントロールする
体重のコントロールも、健康寿命を延ばすためのポイントです。肥満は、生活習慣病をはじめとするあらゆる疾病の原因となります。BMIが27を超えてしまうと、悪性新生物(がん)や脳血管疾患、心疾患などの罹患率と脂肪率が急激に上昇することがわかっています。
一方で、痩せすぎも問題です。筋肉量や筋力が減少することにより運動機能が低下し、骨粗しょう症や、転倒による骨折のリスクが高まってしまいます。また免疫力も低下し、感染症にかかりやすくなることもあります。
BMIを18.5~25未満の「普通体重」に保てるよう、食事や運動による体重コントロールを行いましょう。
ストレスの少ない生活を心がける
ストレスの少ない生活を心がけることも大切です。いくら身体が健康的であっても、ストレスにより精神的な落ち込みや意欲低下などの症状、うつ病などを発症してしまっては、元気で健康的な生活は送れなくなってしまいます。
また、過度なストレス状態は、生活習慣病のリスクを高めてしまうこともわかっています。
ストレス発散方法としておすすめしたいのが、運動です。とくに、ウォーキングやジョギングなどのリズム運動では、幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」が活性化され、気分が明るくなります。
社会的なつながりを維持する
健康寿命を延ばすためには、上記10のような生活習慣の見直しはもちろんのこと、社会的なつながりをもつことも重要です。
友人や地域の人との交流を持ち、社会的に満たされた状態を意識すると良いでしょう。
今回は、健康寿命について、その定義や健康寿命を延ばすための方法を解説しました。
健康寿命を延ばし、高齢者が活き活きと元気に長生きするためには、生活習慣の見直しや定期的な健康診断が重要です。意識を少し変えるだけでも、健康状態に表れてくるはずです。できることから、始めてみましょう。