最期を選ぶ医療!在宅看取りの割合増加

在宅医療を受ける人の数は多くなっており、その分自宅で最期を迎える人も増えています。国民のおよそ60%以上が自宅で療養したいと考えているのです。また、ここ数年は新型コロナウイルス感染症の影響で病院へ入ると面会できないなどの観点から在宅医療を希望する方が多いようです。コロナの感染拡大により外出自粛や行動制限などがありますが、自粛生活が長引くことで家族の絆が深まるケースもあり複雑な心境です。

さて、今回はそんな在宅医療の中でも最も重要となる「看取り」に関するお話です。

●各種苦痛の存在

在宅医療のゴールは治癒ではなく、死であることが多いです。寝たきりや緩和ケア・ホスピスに近い療養となれば治癒ではなく、できる限り自分らしい最期を迎えるというのがゴールになるのです。いわゆる終末期医療(ターミナル医療)におけるケアを終末期看護(ターミナルケア)と呼んでいます。ターミナル期は患者の苦痛を緩和することが主であり、精神的な苦痛や身体的な苦痛を軽減させることが大きな目的です。一般的な看護は日常生活の援助、身体的・精神的なケアや状態観察などがメインとなるため、大きく異なる点はこことなるのです。

▲ターミナルとは?定義を紹介

ターミナルの定義は定まっていません。しかし、人生最期のターニングポイントを迎えることはターミナル期となります。全日本病院協会が定める「終末期医療に関するガイドライン」では、次の3つを満たす場合ターミナル期と定義しているようです。

・複数の医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること

・患者さんが意識や判断力を失った場合を除き、患者さん・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること

・患者さん・家族・医師・看護師などの関係者が死を予測し対応を考えること

▲死を迎えるまでの期間

患者は死を迎える間、ただただいたずらに時間が過ぎるわけではありません。死を受容するために5つのステップを踏むのです。キューブラー・ロスによれば人が死を受け入れるためには「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」の5つのステップがあります。

「否認」は死を受け入れられず、自分がそんなはずないと感情的に否定している状態です。「怒り」はなぜ自分がこんな状態にならないといけないのだと自分の境遇に怒っている状態です。「取引」は自分の運命を神や仏など架空の存在へ祈り続ける状態です。「抑うつ」は死を受け入れる前段階で鬱気分になっている状態です。「受容」は死を受け入れている状態です。

▲ターミナルにおける苦痛

ターミナル医療において緩和させなければいけないのは全人的苦痛です。全人的苦痛には4つの痛みがあります。

・身体的苦痛:身体的苦痛には疼痛、倦怠感、浮腫など身体的な苦痛のことです。病気で体調が悪いときは身体的苦痛に分類されます。対処療法が主になり、末期癌などでは耐えがたい苦痛を伴うことが特徴です。

・精神的苦痛:精神的苦痛は身体的苦痛が続くことで、不安や孤独感・恐怖心などが強くなる状態です。脳機能も低下しているため、せん妄などが生じることがあります。

・社会的苦痛:仕事ができないことによる社会的地位や家族や友人など社会的なコミュニティーから疎外されることで感じる苦痛です。

・スピリチュアル的苦痛:スピリチュアル的な苦痛とは、自分の人生そのものや環境に対する悲観はこの苦痛に該当します。

●身体的苦痛に対する看護

身体的苦痛の背景には末期癌など全身を蝕んでいる病巣があります。身体的苦痛の中には体性痛・内臓痛・神経障害性疼痛の3つがあります。どれも痛みは強く痛み止めを使ってコントロールしなければいけないほどです。体性痛や内臓痛にはオピオイドを使用して、コントロールをすることもあります。オピオイドには眠気や便秘・悪心・嘔吐やせん妄などの副作用が見られるため、注意しましょう。身体的苦痛が起きた場合は痛みの部位や始まった時間・痛みの出現パターン・強さなどを観察します。痛みは第三者にわからないため、痛みスケールを用いて痛みを表現してもらうほかないのです。

疼痛以外にも倦怠感が身体的苦痛で関連します。倦怠感はだるさと表現されることが多く、体調不良と関連して出現します。倦怠感が出現した場合は、いつから起きているか・どのような倦怠感か・服用薬剤はどのようなものか・検査データなどを観察します。倦怠感が1日の中で強弱がある場合は体力消耗が原因となることがあるため、マッサージなど理学療法も取り入れながら療養を進めます。

食欲不振はがん患者などでよく見られます。抗がん剤の副作用で食欲不振が出ることもあります。また、消化器疾患の患者でも食事量の減少や代謝異常がよく見られます。食欲不振が起きたときは食事の摂取量や体重減少率がどれくらいか、検査所見はどのような結果なのかを観察していくことがベターとなります。

●精神的苦痛への看護

精神的苦痛を感じている患者へのケアは難しいです。その人の気持ちは第三者に理解されにくいからです。また、それを患者もわかっているため「あなたに私の気持ちがわかるの?」という気持ちになる傾向が強いです。

▲不安な気持ちへの観察項目

不安な気持ちを抱えている患者へは、何に対して不安な気持ちを抱えているのか、不安な気持ちから身体症状が出ているのか、不安定な精神状態からお酒や暴力へ走っていないかなどを観察する必要があります。疼痛と同じで主観的な尺度でしか評価できないため、不安な気持ちに対する評価スケールを用いて評価することが一般的です。

▲せん妄に対する観察項目

せん妄とは、高齢者における脳の機能不全により起きる認知障害です。死亡直前の約9割の人に見られるとされています。せん妄はうつ病や認知症と鑑別診断が難しく、誤った診断で死亡率へ影響を与えてしまいます。せん妄が起きた場合は、注意力が維持できているか、発症頻度はどれくらいか、日内変動があるのか、認知障害が認められるかなどが観察項目となっています。

●社会的苦痛への看護

社会的苦痛は病気になったことで発生する二次因子のような苦痛です。自分が病気にならなければこんな状態にならなかったという、スピリチュアル的苦痛も誘導してしまいます。社会的苦痛を緩和するためには、家族への支援をはじめとする周囲の人へ協力を仰ぐ必要があります。観察項目としては、患者が家族とコミュニケーションが取れているのか、患者の取手のキーパーソンはどのような人なのか、家族間の人間関係はどのような感じなのかなど様々な項目があります。

家族も看護へ参画することで患者の孤独感を払拭でき、患者の治癒力向上に繋がることもあるのです。さらに、家族が近くにいると患者が死を迎えやすくなり穏やかな最期を迎えることへ繋がります。

●苦痛緩和は誰でもできる

苦痛を緩和させると聞くと大変に感じるかもしれませんが、それは大きな間違いです。患者が緩やかに最期を迎えられるよう家族や周囲の人が支えることが大切なのです。苦痛緩和は看護師や医師だけが行うわけではありません。ぜひ身近な人がターミナル医療を受けている場合は、積極的に苦痛緩和へ参画してください。

近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。

メドアグリケアからのメッセージ