在宅で最期を迎えたい人が抱える問題点をピックアップ!

日本は高齢化が問題となっていますが、それと同じくらい多死社会になっていることも現実です。ある調査では自宅で最期を迎えたいと願っている高齢者の4人に3人が病院で亡くなっているといいます。患者さんは医療の質と同様に生活の質を求める現代の医療で、最期を迎える場所を自分自身で選ぶことは生活の質に大きく関係するのではないでしょうか。そこで、今回は自宅で最期を迎えたいと考えている方が直面する問題点について紹介していこうと思います。

◼ 在宅医療の現状と課題

現在の日本で在宅医療とはどのような立ち位置なのでしょうか。また、在宅医療にはどのような問題点があるのかも一緒に紹介していきます。

  • 在宅医療は第二の選択肢ではなくなった

厚生労働省が2014年に実施した患者調査では、在宅医療の利用者数は過去最大の15万人超だったとされています。ここで換算している在宅医療とは、患者さんの容態が急変したときや緊急事態が発生したときに行う「往診」、毎月や毎週といった決まったペースで実施する「訪問診療」、医師以外が訪問する場合の3つを合計したものです。これと比較して、一般的な医療である外来医療の受診者数は2014年度は351万人でした。2014年のデータと比較しても、在宅医療と外来医療では受診者数に約23倍も差が発生しています。

しかし、在宅医療を受診した人の数は過去最大を記録しました。また、2018年に内閣府が実施した「高齢者の健康に関する意識調査」での、「終末期の療養場所に関する希望」や「終末期ではない療養に関する希望」としてどこで介護や療養をしたいか在宅医療に関するニーズ調査の結果も紹介します。

「終末期の療養場所に関する希望」では、全体の約5割強の人が自宅での療養を希望していました。また、「終末期ではない療養に関する希望」では要介護状態になっても自宅で子供や親族に介護を希望するという人は4割程度存在しました。今や在宅医療とは「病院へ通えない」から利用するのではなく、「自宅で療養したい」から選択する医療サービスになっているのです。

  • 在宅医療の現状

在宅医療の現状を見てみると、決して整備が進んでいると言い切れません。日本医師会総合政策研究機構が「在宅医療の提供と連携に関する実態調査」というのを行いました。その結果、在宅医療機関に勤務している約7割以上の医師が24時間体制の診療に負担を感じていることがわかりました。また、2011年の「保険局医療課データ」によると、人口10万人あたりの在宅療養支援病院数では地域差が激しいことがわかります。例えば、最も人口10万人あたりの在宅医療機関数が多いのは徳島県で1.25です。その一方で、栃木県は0.05と全国最下位となっています。これは、都道府県の大きさや人口・医療機関数などが関係しているため一概に何が問題とは言い切れませんが、在宅医療に伴う地域格差があるのは事実です。

地域差の話を続けると、訪問看護でも同じようなことがいえます。厚生労働省が2009年に行なった「介護給付費実態調査」を元にすると、各都道府県における訪問看護の利用状況と自宅死亡の割合を算出できます。これを見てみると、訪問看護の利用率が高く自宅死亡数が多いのは長野県です。逆に、訪問看護の利用率が低く自宅死亡数が少ないのは佐賀県でした。つまり長野県では比較的在宅医療が浸透していて、佐賀県では外来医療や入院医療が根付いているということがわかります。

  • 在宅医療を取り巻く課題

在宅医療を実際に利用したいと考えている人も在宅医療を取り巻いている課題や問題点について理解しておくとより円滑に在宅医療を利用できます。

▶︎家族に負担がかかる

在宅医療を利用すれば、医師や看護師など療養や医療に関してサポートします。また、必要に応じてヘルパーを雇えば、日常生活のサポートをしてくれます。しかし、看護師もヘルパーもいない時間帯は誰が介護するのでしょうか。それは家族です。食事をするにしても、夜中にトイレへ行くにしても自宅であれば家族が対応する必要が出てきます。

前述の厚生労働省が行なったニーズ調査の結果では、要介護状態になっても自宅で子供や親族に介護を希望するという人が4割程度存在しましたが、実際に介護が必要になった場合には家族に気兼ねしてしまう方も多いのかもしれません。しかし、実際に介護状態になった際、患者さんが親世代の場合家族へ負担をかけることは避けては通れないのも事実です。

在宅医療ではなく、外来医療や入院医療をするにしても病院まで送迎するのは家族になるでしょうし、入院する際の保証人や病状の説明を聞くのも家族です。この問題は非常に難しいですが、できればご家族の方から患者さんがどこで療養したいか、どんな治療を受けたいか等希望する医療環境を聞いて、その希望が叶えられるように家族全員で協力することが良い医療につながるのではないでしょうか。

▶︎急変時の対応

在宅医療を受けている患者さんの体調が急変した場合、24時間診療体制の在宅診療所や訪問看護ステーションであればすぐに連絡をしましょう。そして、指示があれば初期対応をしましょう。もし、24時間体制で診療していない場合は救急車を呼ぶこともあります。日頃から医療者とのコミュニケーションを図り、どういった症状には気をつけたらいいか、急変時にはどうしたらいいのかを聞いておくこともいいでしょう。

▶︎後方支援があるのか

急変をした後に、入院が必要となったらすぐに入院できるのかという不安を抱えている方もいます。そこは安心してください。病院は、在宅医療をしていた患者さんというだけで入院や治療を断ることはありません。後方支援として病院の医療を受けることも可能です。

◼ 在宅で最期を迎えたい人の割合

人生の最期をどこで迎えたいかという希望には医療職と一般人の間で若干の差があることがわかりました。厚生労働省が2014年に実施した「人生の最終段階における医療に関する意識調査」をみると、最期を自宅で迎えたいという一般人は7割、医師に同様の質問をすると自宅で最期を迎えたいという人の割合は8割強、看護師になると9割もの人が自宅で最期を迎えたいと回答しています。

訪問診療が一般的であった昭和初期であれば、自宅で最期を迎える人の数も多かったです。1951年には死亡者数の約9割が自宅で死亡していました。それが外来医療・入院医療の発展とともに減少していき2003年には全死亡数のうち約7割強が病院で死亡していました。しかし、今まで何度も紹介しているように在宅での療養を望む人の割合は多く、2015年に向かっては微増ですが自宅や老人施設で最期を迎える人の数が推移しています。

◼ 在宅で最期を迎えるための課題

在宅医療は認知度が増していて、自宅で最期を迎えたいという希望を持つ人の数も多いですが、在宅で看取るためにはまだまだ課題が残っています。

▶︎住宅環境

病院の病室と自宅で大きく違うところがあります。それがトイレの位置です。病室であれば、ベッドから近い位置にトイレがあります。しかし、自宅だとそうはいきません。療養する家族がトイレを使用できるのか問題となることがあります。また、お風呂や部屋間の段差、廊下など活動範囲の導線などの改善や手すり取り付けなど改修等が必要になることがあります。

▶︎家族の介護力

ヘルパーさんや看護師さんが定期的に訪問してくれても、最終的には家族が介護しなければいけません。家族の中でも誰が介護するかでトラブルに発展することもあります。

▶︎患者さん本人の課題

いざ、在宅で療養しようとしても治療をしなくて良いのか、最後まで病気と戦わなくて良いのかなど葛藤が生まれます。また、死を受け入れることができない人も中にはいて、患者さんの精神的な負担をいかに軽減させられるかが課題となります。

◼ まとめ

在宅医療の利用者は微増ですが増加傾向となっています。これは、在宅で看取ってもらいたいと考えている患者さんにとって在宅医療の整備を進める良い機会となっていますが、自宅で最期を迎えるには若干の課題も残っていました。実際に課題としてどのようなものがあるのか理解して、ご自身やご家族がどのように向き合っていくべきか考えていただければ幸いです。

近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
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