認知症で見られる周辺症状って何?中核症状との違いも解説

認知症の症状には、「周辺症状」と「中核症状」の2種類があり、これらを把握しておくことで、認知症の早期発見や発症時のスムーズな対応につなげることができます。

この記事では、認知症の周辺症状と中核症状について解説するとともに、早期発見のポイントと、認知症の予防法について紹介していきます。

認知症で見られる症状

認知症高齢者が怒っている

認知症で見られる症状には、下記の2種類があり、それぞれで特徴が異なります。詳しく見ていきましょう。

  • 周辺症状
  • 中核症状

周辺症状

認知症で発生する「周辺症状」は、「行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」、略して「BPSD」と呼ばれることもあります。

これらは特に、行動や心理的な症状として現れるものが多く、具体的には次のような障害が起こります。

  • 暴力・暴言
    :感情をコントロールする脳の前頭葉が萎縮したり脳が疲れやすくなることにより、感情を抑えるのが難しくなっていく。
  • 介護拒否・服薬拒否
    :環境の変化に対する不安や意欲の低下のほか、薬を飲むことを理解できなくなったり、妄想などによっても介護や服薬を拒否することがある。
  • 徘徊
    :場所の見当識障害が進むにつれて現れるようになり、外出先で道に迷うほか、見慣れているはずの自宅や施設などを知らない場所と感じて外に出てしまう場合がある。
  • 妄想
    :現実にはあり得ないようなことを過剰に強く思い込むことで、周囲の人にものやお金を盗まれたと主張する「もの盗られ妄想」や、いじめられたなどの「被害妄想」などが当てはまる。
  • 無気力・抑うつ・不安
    :日常生活でできないことが徐々に増えていくことに不安を感じ、気分が落ち込んで抑うつ状態になるがある。
  • 幻覚
    :実際には存在しないものが見えたり聞こえたりする症状で、見間違えから幻視まで症状はさまざま。レビー小体型認知症で多く見られる。

こうした症状は、患者本人だけでなく、介護者の心的・身体的負担が大きくなりやすい傾向にあります。また、その人の性格や環境によっても症状の出方が異なるので、対処が難しいという特徴を持ちます。

中核症状

中核症状は、脳の障害、脳の働きの低下によって直接的に引き起こされるもので、記憶障害や見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、言語障害(失語)など認知機能に障害が現れます。

  • 記憶障害
    :「ものを覚える」ことができなくなる障害のこと。例えば、ご飯は食べたけれど、内容を覚えていない「もの忘れ」とは異なり、ご飯を食べたことすら忘れてしまうのが特徴。
  • 見当識障害
    :主に、時間と場所がわからなくなること。今が何月何日なのか、ここがどこなのかわからなくなり、季節感もわからなくなる。
  • 実行機能障害
    :物事の段取りを立てることができなくなったり、いくつもの動作を同時にこなすことができなくなったりする。
  • 失行
    :それまで当たり前にできていたことができなくなることを指す。日常の動作に加え、お箸などの道具を使うことが難しくなる場合もある。
  • 失語
    :言葉を司る脳の部位に損傷が起きることによって、文字を読んだり、書いたり、言葉を話したり、理解することが困難になった状態。
  • 失認
    :脳の頭頂葉、側頭葉、または後頭葉に損傷が起きたときに見られる症状で、モノを触ってもそれが何か理解できなかったり、モノを見てもそれが何か認識できなくなったりする。
  • 理解・判断力の低下
    :理解するまでに時間がかかったり、適切な判断が難しくなったりする。いつもとは違う出来事に対応できず、混乱することもある。

こうした症状は、前述した周辺症状とは異なり、認知症になるとほぼ確実に現れるのが特徴です。そのため、認知症発症を見極めるサインとして用いられることが多く、発見したら速やかに医療機関へ相談する必要があります。

「これってもしかして認知症?」と思ったら

では、もし家族に認知症を疑わせる症状が見られた場合は、具体的にどのような行動をすれば良いのでしょうか?

認知症のサインを見極める

まずは、認知症のサインとなる症状があるか確認しましょう。

先ほども説明したように、認知症の症状である中核症状と周辺症状にはそれぞれ特徴があり、認知症の発症に伴ってほぼ確実に現れるのは「中核症状」であることが多いです。

ゆえに、まずは中核症状が見られるか見極めることが大切です。

例えば、夕食は食べたけれどその内容を覚えていなければ「もの忘れ」ですが、夕食を食べたことを忘れたり、再び食べようとしていたら認知症を発症している可能性が高いです。

また、これまでは当たり前にできていた日常動作(服を着替える、歯を磨く、テレビをつけるなど)が急にできなくなっていたり、暴力や暴言、妄想などの周辺症状も現れている場合は、認知症のサインが強く出ていると考えて良いでしょう。

早期治療を行う

上記のように、認知症の発症サインが強く現れていると判断したら、なるべく早く医療機関を受診し、治療をさせることが大切です。

認知症は、放っておくとどんどんと進行し、日常生活に大きな影響を及ぼす一方、一見ただのもの忘れと見分けがつきにくいため、見逃されてしまうケースも少なくありません。

ですが、早い段階から適切に対処をすれば、認知症の症状を抑え、進行を遅らせることも可能とされています。

ゆえに、症状に心当たりがある場合は、なるべく早く治療を受けさせることが大切です。

しかし、本人が「自分は何もおかしくないのに、なぜ病院に行かなければならないのか」と受診を嫌がったり、拒否したりする場合もあるでしょう。

確かに、いきなり「最近おかしいよ」とか「もの忘れがひどいから、病院行こう」といっても、本人を傷つけるだけであまり有効ではありません。そればかりか、無理やり病院に連れて行くと、医者や看護師のことも「自分を病人に仕立て上げようとする敵だ」と認識し、家族の信頼関係が崩れ、その後の治療がうまく進まないことにもつながります。

その場合は、まずは患者本人の自尊心を傷つけないことが大切です。

例えば、「最近ちょっとおかしいから、病院へ行きましょう」と言うのではなく、「ちゃんと治療すれば治るかもしれないから、早めに専門家に診てもらいましょう」と勧めた方が、本人も抵抗なく受診することができます。その際には「家族が心配しているから、家族のためにも診てもらってほしい」と伝えると、よりスムーズに受診を促すことができるでしょう。

今からできる認知症の予防方法

現在、認知症の平均発症年齢は51歳と言われています。そのため、大切になるのが、認知症にならないように早い段階から予防をしておくことです。また、認知症予防生活を習慣化しておくことで、発症してもその進行を緩やかにできるともされています。

では、具体的にどのようなことに気をつければ良いのか、解説していきましょう。ポイントは以下の3つです。

  • 栄養バランスの取れた食事
  • 適度な運動
  • 人とのコミュニケーション

栄養バランスの取れた食事

認知症高齢者が栄養バランスの良い食事をしている

まずは、バランスの取れた食事です。肉や魚、野菜、果物などをバランス良く含んだ食事を3食、かつ規則正しい時間に食べましょう。

また、塩分や糖質は控えめにすることで認知症予防につながるとされています。

あわせて、抗酸化成分を含む食品は、アルツハイマー型認知症だけでなく、脳卒中などの疾患の予防や進行を遅らせる効果も期待できると言われています。

具体的には、不飽和脂肪酸DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を含む青魚や、レシチンを含む大豆製品、納豆、野菜などがあげられます。どれもスーパーで手軽に購入できる食品ですので、普段の食事に取り入れると良いでしょう。

適度な運動

次は、適度な運動です。特に、有酸素運動を日常的に取り入れることで、認知症の予防だけでなく、動脈硬化や糖尿病、がん予防が期待できると言われています。

具体的には、会話が楽しめる程度の軽いウォーキングや水泳、エアロビクスなどが良いでしょう。ただし、普段あまり運動をしない人は、負荷が高い運動を始める前に必ず医師に相談してから行ってください。

また、外に出て運動することが難しい場合は、「ながら運動」も効果的です。例えば、室内でテレビを見たり、家事をしたりするときに、ストレッチや軽い筋トレをすることで隙間時間に効果的に運動をすることができます。

人とのコミュニケーション

最後は、人とのコミュニケーションを積極的に取ることです。

認知症を発症した人の中には、「変なことを言って周りに迷惑をかけてしまうのではないか」と心配し、人との会話を避けてしまう人がいます。

ですが、これでは余計に脳の機能低下に拍車がかかり、認知症の進行を加速させてしまう可能性があります。

ですので、なるべく普段から積極的に家族や近所の人、友人などとコミュニケーションを取るようにしましょう。そうすることで、脳の活性化が促され、認知症の予防に効果が期待できます。

会話をする機会が少ないという人は、テレビ電話で家族と会話をしたり、町内会の行事に参加したり、ボランティア活動に参加したりするのがおすすめです。

まとめ

今回は、認知症を発症すると見られる「周辺症状」と「中核症状」について解説を行いました。

認知症の発症は、「ただの、もの忘れ」や「歳のせい」と見逃されることも多いため、症状の特徴を把握しておくことは早期発見・早期治療につながります。

ぜひ、今回の記事をそれぞれの症状の特徴や、発症を見極める参考にしてください。

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