誤嚥性肺炎の原因!嚥下障害を徹底解説

日本人の3大死因は悪性新生物・心疾患・脳血管疾患です。第4位には肺炎が入っています。肺炎は過去死因第3位となっていた疾患です。いまだに死亡者数は多く、年間11万人が肺炎で亡くなっています。若年層ではそこまで罹患率が高くないですが、85歳以上の高齢者では発症率が高い疾患として有名です。その原因の一つに誤嚥があります。今回はそんな誤嚥と肺炎の関係性について見ていこうと思います。

●誤嚥性肺炎とは?

厚生労働省は平成28年に「高齢化に伴い増加する疾患への対応について」という資料を発表しました。資料の中では、医療計画についてや死亡率について明記されている他、肺炎について特筆してありました。

誤嚥性肺炎とは、唾液や食べ物を嚥下するときに誤嚥した結果、食道へ本来通るべきものが気管へ誤入することで「誤嚥」という状態となります。気管内へ細菌が侵入すると、気管内で細菌が繁殖して肺炎を発症します。他にも嘔吐に伴い嘔吐物が気管内へ入ることで、胃酸による化学性の肺炎を発症し、誤嚥性肺炎を招くのです。

冒頭では「肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者で、高齢者の肺炎のうち7割以上が誤嚥性肺炎である。誤嚥性肺炎を起こす原因として知られる嚥下障害の原因の多くは脳血管疾患による後遺症である」と明記されています。

●嚥下障害について

嚥下障害とは、物を食べるだけでなく食べ物を認識・口に入れる・噛む・飲み込むまでの一連の動作が正常に行えないことを指します。嚥下というと飲み込む行為だけを指すと感じている人もいますが、そうではありません。

▲口腔期

食べ物を口腔内へ入れた状態は口腔期といいます。咀嚼運動とともに食塊形成を行い、喉へ食物を送る働きをします。

▲咽頭期

咽頭期とは、嚥下の初期段階です。鼻咽腔閉鎖だけでなく、口腔との遮断を行います。嚥下反射が起き、喉頭が挙上して食道入り口が開大します。結果、食道へ食物が流れるのです。

▲食道期

食道を食べ物が通過する時期です。喉頭腔が開放することで食道から消化器官へ送られます。

▲嚥下障害で起きる弊害

嚥下障害が起きると誤嚥性肺炎の発症リスクが高くなります。誤嚥リスクが高くなると、医師の判断で経口摂取を禁止とすることもあります。もし経口摂取を禁止にすれば栄養不足となり、低栄養、体重減少などが起きてしまいます。このような嚥下障害が起きる背景には脳血管疾患による後遺症が関係します。しかし、嚥下障害は加齢でも起きます。年齢とともに筋力が低下し、その結果嚥下力が落ちてしまいます。誤嚥が起きているか否か、簡単な検査法として食後に咳をするか食後に痰が出やすいかなどで判断します。

嚥下力低下に関する検査にはスクリーニングと確定診断をするための検査に分けられます。スクリーニング検査としては、反復唾液検査が有名です。確定診断のための検査と比較して、簡便に行えるため患者へ提案しやすい検査となります。健常な高齢者であれば3回空嚥下をするのに11.4秒前後かかります。スクリーニングテストとしては、平均値の+3SDの30秒をカットオフに用いています。30秒間に何回空嚥下ができるかで測定して、3回未満を陽性と判断するのです。

確定診断に用いる検査としては、嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査の2種類があります。嚥下内視鏡検査は鼻から内視鏡を入れて、嚥下時の喉頭蓋の動きをみます。実際に喉の状態を観察できるため確定診断がつきやすいです。後述で登場する造影検査と比べて、検査場所を選ばずに使用できるのも特徴です。嚥下内視鏡検査と比較されるような検査で嚥下造影検査があります。造影というだけあり、造影剤を入れた食べ物を咀嚼して嚥下します。造影する環境がなければできないため、できる施設に限りがあります。検査をする医療従事者は被曝のリスクがあるため懸念されることもあるのです。

●誤嚥を起こさないために

誤嚥性肺炎を予防するためには、誤嚥を起こさないようにすれば良いのです。リハビリやトレーニングを重ねると、嚥下力は向上します。しかし、それだけでは対策が万全とはいえません。

一般的には誤嚥すると、ムセが起きます。咳払いをして気管内へ入った異物を排出しようとするのです。誤嚥の中にはムセが起きないタイプの誤嚥もあります。つまり誤嚥を100%予防するのは無理に近いのです。そこで重要となるのが口腔ケアです。

▲口腔ケアの方法

口腔ケアとは口腔内をきれいにするだけではありません。きれいな状態を続けさせることが重要なのです。高齢者の場合は、歯科医院へ行くのではなく自宅や施設へ歯科医師が訪問する訪問診療を受けている方もいるでしょう。お口の中の汚れを機械で落とすだけでなく、歯磨きの仕方や入れ歯の管理方法なども指導を受けるのではないでしょうか。

高齢者の方が自分で口腔ケアができない場合は、家族や施設のスタッフが口腔ケアをしてくれます。そんなときにどのような対応をすれば良いのか紹介しましょう。

●高齢者に対する口腔ケア

高齢者に対してどのような口腔ケアをすれば良いか紹介していきます。

▲歯ブラシ

歯ブラシを用いた歯磨きは基本中の基本です。歯の表面についている汚れを落として、きれいに保ちます。また、日々の歯磨きでどこをどのように磨いたら良いか指導します。

▲舌ブラシ

舌の表面が白くなっている場合、舌苔と言う汚れが付着している可能性が高いです。舌苔は口臭の原因となる他、口腔環境悪化にもつながります。舌を強く押し付けてしまうと、嘔吐反射が出ることもあるため、加減に気をつけて舌ブラシを用いた舌ケアをしましょう。

▲入れ歯のケア

入れ歯は材料の性質上、汚れが付着しやすいです。特に歯と金具の間は汚れが多いです。入れ歯を洗うときは流水で優しく洗いましょう。絶対に歯ブラシでゴシゴシと洗わないようにしてください。強く磨いてしまうと入れ歯に細かな傷がついてしまいます。結果、細かな傷に汚れが入ってしまい細菌繁殖の原因となるのです。

入れ歯というと入れ歯洗浄剤を使ったほうが良いの?という質問があります。流水でしっかりと汚れが落ちていれば入れ歯洗浄剤を使用する必要はありません。

▲無歯顎のケア

ご自身の歯が1本も残っていない場合は、歯ブラシを使用せずにスポンジブラシを使用しましょう。スポンジブラシとはその名の通り、スポンジを用いたブラシです。口腔粘膜の汚れを優しく落とすため効率よく口腔内をきれいにできます。

▲口腔乾燥患者へのケア

高齢になればなるほど唾液の分泌量が減少します。結果、口腔乾燥となってしまいます。口腔乾燥を放っておくと嚥下障害が強くなるだけでなく、細菌が繁殖しやすくなります。また、味覚障害などもみられることがあるのです。

●嚥下障害を理解している耳鼻科・歯医者を選ぶ

嚥下障害や誤嚥性肺炎が疑われるような方が身近にいれば、耳鼻科や歯科へ相談しましょう。嚥下内視鏡検査を自宅で行ってくれる歯科医院も増えています。当院でも地域の介護事業者さんや歯科医院さんなどと連携を組みながら、地域医療貢献へ活動を続けていきます。皆さんも嚥下で困ったらすぐに当院のスタッフでも良いですし、ケアマネージャーさんへ相談しましょう。

誤嚥性肺炎を防ぐためには、適切な口腔ケアとトレーニング・リハビリが必要となります。継続は力なりとなるので、ぜひ1日1日を大切に積極的に誤嚥防止をしましょう。

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