新型コロナワクチンの今と接種の是非

新型コロナウイルス感染症の流行を抑えられている国はありません。日本も例外ではなく緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置(通称:まん防)など手を変え品を変え対応しているものの、感染拡大を止められてはいません。そんな中、最後のカードとして期待されているのがワクチンです。従来であればインフルエンザの予防や子宮頸癌予防でワクチンが使用されていましたが、今回は新感染症に対するワクチンが活用されるときがきたのです。そこで今回は最新版の新型コロナウイルスワクチン情報を紹介していこうと思います。

  • 新型コロナウイルス感染症のまとめ

新型コロナウイルス感染症は2019年11月ごろに中華人民共和国で感染者が発見された肺炎を引き起こすウイルスです。もともとSARSウイルスと同じウイルスなため、SARSウイルスも属するコロナウイルスという名前がつきました。最初に感染者が確認されたのは2019年12月ですが、2019年3月に中国国内で採取された廃水の中から新型コロナウイルスが検出されたというデータがあります。また、2019年9月にイタリア国内で肺がん検査を受診した患者の血液中から新型コロナウイルスの抗体が検出されています。これらのことから2019年12月に確認された患者以前より、世界中で新型コロナウイルスまたはそれに近似したウイルスが流行していたと推測できます。その後、日本国内で感染者が確認されると国内で一気に感染者が増えていきました。ちょうど中国国内が春節の時期と重なったことで観光へ出かける人が多く、世界中へ感染拡大してしまいました。

▲緊急事態宣言とロックダウン

感染拡大は世界中で起こりました。2020年1月には中国国内でロックダウンが起こりました。2月にはイタリアが、3月にはイギリス・アメリカ・スペイン・フィリピン・チェコ・ドイツなどでロックダウンの宣言がされました。日本では、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議がおこなわれ、感染防止に3密が関わってくると明言しました。3密とは「密接・密集・密閉」のことで今でも感染防止対策として重要視されています。この時期に新型コロナウイルスがどのようなフェーズへ行けば感染が落ち着くのかという推測が始まりました。結果からすれば「集団免疫」を獲得すると感染の流行は下火となります。集団免疫とはある感染症に対して集団の大部分が免疫を持っている状態を指します。集団免疫ができる背景には紛いなりにも感染しなければいけません。感染状態から治癒すると抗体ができ、抗体ができれば新しく身体へ侵入してきたウイルスへ抵抗力を示します。しかし、日本国内だけでも約1億2000万人が生活しており、そのほとんどが感染しなければ集団免疫を獲得できないというのは理想論に過ぎません。実際にそれだけの人数が一気に感染すれば医療崩壊は避けられないだけでなく、死亡者も世界トップクラスとなってしまいます。2020年4月に緊急事態宣言が発出され、人流抑制が行われましたが宣言解除とともに再度感染者数は増加となりました。2021年4月までに合計3度の緊急事態宣言発出となりましたが、いまだに感染者数は減りません。集団免疫を獲得するまでまだまだ感染者数が足らないと言い換えられるのです。そこで注目が集まっているのがワクチンです。

  • 新型コロナウイルスワクチンの今

新型コロナウイルスの流行直後から、遺伝子情報などは世界各国の協力のもと解析されていました。遺伝子情報が解析されると各国の製薬会社や医療系大学を中心にワクチン開発が進んだのです。ワクチン開発では治験をはじめとする臨床試験を経由し、安全性や有効性を証明しなければいけません。一般的に日本は新薬や新ワクチンなどを承認する際に何度も治験をしなければいけなかったり、審査に時間がかかったりします。これは日本の国のシステム上どうしても仕方がないことです。

新ワクチンはⅢ相までのステップを踏む臨床試験を経て、有効性が確認されます。2021年の段階ではRNAワクチンとしてファイザー製・モデルナ製が承認されています。他にもウイルスベクターワクチンとしてアストラゼネカ製枠林が承認されています。世界レベルで見れば308ものワクチン候補が存在しており、ワクチン戦国時代とも言い換えられるのです。

▲日本国内におけるワクチン

日本国内におけるワクチンの承認状況をみると2021年2月にファイザー製ワクチンが特例承認されました。特例承認とは新型コロナウイルスに適用されている特措法に基づき、前述の多岐にわたるステップを飛ばして承認されるものです。これにより日本国内でワクチン接種が公費により行なわれることとなりました。最初は新型コロナウイルスに感染すると重篤になりやすい高齢者や医療従事者への先行接種からです。医療従事者について厚生労働省は次のように定義しています。

「病院、診療所において、新型コロナウイルス感染症患者(疑い患者を含む)に頻繁に接する機会のある医師 その他の職員 」

この定義には注釈として、歯科医師または歯科医療関係者も従事者へ含む旨や訪問看護ステーションや助産所で新型コロナウイルス感染症患者に接するものは病院、診療所の職員に含まれる旨が記載されています。他にも薬局の薬剤師やスタッフ、新型コロナウイルス感染症患者を搬送する救急退院や海上保安庁・自衛隊職員、新型コロナウイルス感染症患者に頻繁に接する業務を担う自治体職員(保健所職員や検疫所の職員)も医療従事者の範囲内とされています。

医療従事者向けの選考摂取は2021年2月17日から始まりました。各自治体の医師会・歯科医師会・薬剤師会で取りまとめを行い接種スケジュールが決まり、随時接種されます。使用されるワクチンはファイザー社製で基本2回接種が基本となります。

高齢者向けのワクチン接種は2021年4月12日から全国でスタートとなりました。予約システムを導入している自治体や先着順で予約を受け付けている自治体などそれぞれの取り組みが見られますが、多かれ少なかれ問題が起きています。予約に関するトラブルはあるもののファイザー製ワクチンを使っており接種後の重篤なトラブルは起きていません。

  • 各ワクチンの現状

ファイザー製ワクチンは比較的安全性が高いワクチンとして知られています。実際、臨床試験でもアナフィラキシーショックなどは報告されていますが少数でほとんどの人では見られないでしょう。また、実際にワクチンを接種した身からすると少なからず筆者が接種した会場内には多くのスタッフがいてアナフィラキシーショックをはじめとする副反応が発生しても迅速に対応できる印象を受けました。

一方、2021年5月に特例承認されたアストラゼネカ製ワクチンには不安な点があります。外国で実際に接種した人の体内から血栓ができたと報告されたのです。脳静脈洞や門脈・肝静脈などで血栓ができて血栓症が起きています。これは50歳未満の女性に多く見られるのが特徴です。他にも南アフリカ変異株に対する予防効果が低く、変異株に対応できるかは疑問が残ってしまいます。同時期に特例承認されたモデルナ製ワクチンはファイザー製と同様の予防効果を示し、安全性も比較的高いと報告されています。

アストラゼネカ製ワクチンは前述の背景があるため、ファイザーやモデルナとは違って公的接種の対象からは外されたものの、国内の薬事承認のみ通っている状態です。

  • ワクチン接種の是非を問う

人類が今まで出会ったことのないウイルスに対する新しいワクチン に不安を抱える人は少なくないでしょう。中にはワクチン接種を拒む人もいます。しかし、それはそれで個人の選択です。先行接種が始まっている医療機関の中には、接種を拒む人へ対して「新型コロナウイルスへ罹患した場合は自己責任で有給消化する」という覚書を書かせているところがあるとも聞きます。このようなことはワクチン接種だけでなく、新型コロナウイルスを乗り越える上で障壁となりかねません。ワクチン接種を受けるか受けないかどちらを選択しても正解です。一日でも早く新型コロナウイルスを克服できる社会が来ることを願っています。

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