日本でなぜ医療崩壊が懸念されているのか!諸外国と日本の医療体制を比較します

突然ですが皆さんにとって日本という国はどういう国でしょうか?衛生的で、経済的でほしいものがインターネットですぐに調べられ・手に入る国ではないでしょうか。どこかの国のように情報に制限があるわけではなく、SNSを利用すれば個人が発信者になれるのです。そんな日本でも新型コロナウイルスは感染拡大を広げています。国内で1人目の感染者が確認されてから連日のようにテレビではコロナ関連のニュースを取り上げるようになりました。感染者が増加を続ける中で、だんだんと問題になったのが医療についてです。「医療崩壊」や「医療逼迫」という言葉が取り上げられました。今回はそんな医療崩壊について話をしていこうと思います。

  • 日本のコロナ感染者数推移

2020年1月6日。NHKがあるニュースを報じました。中国・武漢で原因不明の肺炎が発生し、59名患者が確認され、そのうち7名が重症となりました。その2日後、WHO(世界保健機関)が武漢で流行している肺炎は新型ウイルスの可能性を否定できないという声明を発表します。そして同月11日中国国内で初めての死者が発生します。死亡した男性をはじめとする多くの感染者は武漢市内の海鮮卸市場の関係者なので市場の営業停止が行われました。同月14日、WHOが原因不明の肺炎は新型コロナウイルスによるものと発表します。

WHOにより新型コロナウイルスが原因とされた肺炎は世界中へ波及します。中国の春節により、世界各国へ旅行者が出たことが原因とされています。その後は欧州を中心に大規模な感染がおきました。イギリスなどは日本と違い、ロックダウン(都市封鎖)を発動という強力な法的措置があります。ロックダウンで夜間の外出には罰則を設けるなどした結果、イギリス国内の感染を一時的に抑えることができました。しかし、イギリス国内では新型コロナウイルスが変異し、感染力を上げていたのです。人々の自粛生活も長くは続きませんでした。感染力をあげたウイルスとともに深夜にパーティーをするなどし、クラスターが国内で相次いで発生。再びロックダウンをしなければいけないほどの感染拡大となりました。

▲日本国内の感染

日本国内では2020年1月15日に初めて感染が確認されました。神奈川県在住の中国籍の男性が帰国後に発症し国立感染症研究所が検査した結果、新型コロナウイルス感染症と判明したのです。その後も、春節の時期に北海道へ旅行に来ていた中国人が発症するなど、感染している中国人が国内で発症するケースが相継ぎました。同年2月3日には世界周遊中だったクルーズ船の船内で新型コロナウイルス感染者が確認されました。クルーズ船は世界各国の港へ停泊許可を出しましたが断られ、日本の横浜湾に停泊することとなったのです。クルーズ船内で陽性が確認された乗客は国内の拠点病院へ運ばれ治療を受けました。それまでは感染者と接触のあった者のみ感染していましたが、次第に感染者と関係ない人も感染していきます。市中感染の発生です。市中感染とは、街中で感染症が蔓延している状態を指します。コロナウイルスも例外ではなく、感染者と接触していない人にも感染していったのです。

  • 日本と世界の感染者数の違い

コロナウイルス感染当初から世界と日本の感染力の違いは指摘されていました。今になってみても世界と諸外国の感染者には大きな違いがあります。日本の累積陽性者を1としたとき、アメリカでは33・イギリスでは20・フランスでは21という結果になりました。つまり、単純にアメリカでは日本の33倍・イギリスでは20倍・フランスでは21倍の人が陽性者となっているのです。では、日本との比較をするためにも各国のコロナによる病床占有率をみてみましょう。日本の病床占有率は1.7%です。やはりコロナ患者の受け入れをしているのは一部の病院(特に地域の3次医療を担っている大病院)に集中しています。これはコロナウイルスが原因の肺炎が悪化した際には人工呼吸器の装着やICUでの管理が必要になることも影響しています。また、大病院でなければマンパワー不足になり、患者のケアが行き届かないという問題もあるのでしょう。

では、諸外国の病床占有率はどうなのでしょうか。アメリカでは14%・イギリスは16%・フランスは7%となっています。やはりアメリカでは感染者数が多いため病床占有率が高いという結果が出ています。日本の1.7%という数字は急性期病院に限定したもので、慢性患者や療養型病院を含め国内の病院全部を母数とすると病床占有率は0.7%にまで下がります。

▲日本方式はどうなっている?

日本国内で医療崩壊が起きるのか起きないのかという議論に移りましょう。言わずもがな日本は法治国家です。新型コロナウイルス感染症は感染症法という法律に基づき、検査・隔離がおこなわれています。もちろん新型インフルエンザを初めとする感染症も同様に感染症法が元となっています。その結果、新型コロナウイルス感染症の主要症状(咳・発熱・倦怠感・味覚障害など)のほか感染者との濃厚接触(厚生労働省の定義ではマスク着用なしで1m以内で15分以上の接触)があった人は感染症法により検査を受けなければいけないのです。当初はPCR検査数が少ないといわれていましたが、検査数も増加していきました。日本ではその結果、陽性となった人の35%程度が入院しているのです。諸外国では陽性者の3%程度しか入院していないに関わらず、病床占有率が高いですよね。これは病院の数が少ないという新しい問題が浮き彫りになった証明です。

▲諸外国の病院事情

諸外国ではコロナで陽性になったから入院というわけではなく、病状悪化してからでなければ入院できないことになっています。病床占有率ではなく、ICU占有率をみると日本が7%なのに対してアメリカ・イギリスともに30%となっています。

  • 医療崩壊がなぜ叫ばれているのか?

日本が2020年4月に発出した緊急事態宣言。その後、夏に第二波が来たときは発出せず2021年1月に再度緊急事態宣言を発出しました。その背景には「医療崩壊」が関係しています。日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会を初めとする医療関係団体が医療崩壊について記者会見を行ったのです。

2021年1月5日に四師会・四病協・東京都医師会合同記者会見として、日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会・日本看護協会・日本病院会・全日本病院協会・日本精神科病院協会・日本医療法人協会・東京都医師会の代表者が集まりました。そこで日本医師会の中川俊男会長は「医療緊急事態」を宣言するとともに「日本が世界に誇る医療制度が風前の灯火(ともしび)の状況にある」と話しました。

▲医療崩壊のなぜ

では、日本は本当に医療崩壊を迎えているのか?現場で尽力している医師・歯科医師・看護師・薬剤師など医療職のみなさんには頭の下がる思いでいっぱいですが、日本・アメリカ・フランス・イギリスの各国における「人口あたりの病床数と医師数」についてみていこうと思います。昔から日本は医師不足が問題となっています。日本の人口1000人あたりの医師数が約2.5人に対し、アメリカは2.5人・イギリスが2.7人・フランスが3.2人とどの国も突出して多いわけではありません。では、人口10万人あたりの病床数はどうでしょうか。日本は10万人あたり1300床の病床があります。アメリカは220床・イギリスは210床・フランスは610床となっており、病床数は日本の方が充実しています。最後に人口1000人あたりの看護師数です。日本では12.5人・アメリカでは11.9人・イギリスは7.9人・フランスは11人となっており、これも日本の充実ぶりがわかります。

  • 医療崩壊が起きないとはいえない

日本は人材や病床ともに諸外国と比べて充実しているといえます。しかし、新型コロナウイルス感染症の患者さんに対するケアは普通のケアと異なり、個人防護服の着用が必須です。2020年には医療職やその家族に対してコロナ差別とも言えることが起きています。

日本国内で現在コロナ患者に対応している病院数が少ないことも影響し、医療崩壊が騒がれていますがコロナ患者に対応する病院が増えれば病床数問題は解決できるでしょう。ですが、今この瞬間もコロナ患者と向き合ってくれている医療関係者がいることを忘れずに感染対策を徹底しましょう。

近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
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