老老介護・認認介護の問題点とは?予防法や対策についても解説

少子高齢化に拍車がかかるわが国においては、介護の担い手不足が深刻な問題となっています。その影響によって「老老介護」「認認介護」が増加していることも、重要な課題として捉えるべき問題です。

そこで今回は、老老介護・認認介護に関して、増加の原因や予防法、対策について解説します。

 

老老介護・認認介護とは?

はじめに、老老介護と認認介護について理解しましょう。

 

老老介護とは?

老老介護は、要介護者と介護者の両方が65歳以上の高齢者である状態のことをいいます。具体的には、高齢の夫が高齢の妻を介護する、高齢の娘がさらに高齢な母親を介護する、などのケースがあります。

2019年に厚生労働省によって行われた「国民生活基礎調査」では、在宅介護のうちの約6割が老老介護状態にあることが明らかになり、話題になりました。

 

認認介護とは?

認認介護は、老老介護のなかでも、要介護者と介護者の両方が認知症を発症しているケースです。同じく2019年の「国民生活基礎調査」によると、介護を必要としている高齢者の主な原因は認知症であることもわかっています。

認認介護は、今後も老老介護の増加に比例してさらに増加することが予測されます。

 

老老介護・認認介護が増加している原因

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老老介護や認認介護が増加している原因として考えられるのは、以下のとおりです。

  • 平均寿命と健康寿命に大きな差がある
  • 生活スタイルの変化により身近に頼れる人がいない
  • 金銭的に余裕がない

順に解説します。

 

平均寿命と健康寿命に大きな差がある

老老介護が年々増加する原因の一つに、平均寿命と健康寿命の差があります。

健康寿命とは、介護なしで日常生活を送れる期間のことです。つまり、平均寿命から健康寿命を差し引いた期間が介護を必要とする期間ということになります。2020年に内閣府が発表した「高齢社会白書」によると、2016年時点で、男性は8.84年、女性は12.35年もの間介護を要することがわかっています。医療の進歩などによる平均寿命の延長が影響し、高齢者が介護を必要とする期間も長くなってしまっているのです。

 

生活スタイルの変化により身近に頼れる人がいない

身近に頼れる人がいないことも、老老介護が増加する一因となっています。

核家族化や女性の社会進出などにより、近くに子どもがいない高齢者や、近くにいたとしても頼りにくい状況になってしまっている高齢者は少なくありません。これには、「別居家族を頼るのは申し訳ない」「子どもは子どもで忙しくしているから頼るわけにはいかない」「若い者に介護を任せるわけにはいかない」など、高齢者自身の意識も影響しています。

金銭的に余裕がない

介護施設への入所や通所サービスの利用など、介護サービスの利用にはお金が必要です。しかし、経済的な余裕がないことにより、介護サービスなど社会資源の利用が困難な人もいます。これも、老老介護を増加させてしまっている原因の一つです。

 

老老介護・認認介護の問題点

老老介護や認認介護の主な問題点は以下の4つです。

  • 体力的・精神的負担が大きく、共倒れになる可能性がある
  • 経済的な負担がある
  • 社会との接点が少なくなる
  • 正しい介護ケアができない可能性がある

順に解説します。

 

体力的・精神的負担が大きく、共倒れになる可能性がある

老老介護・認認介護の最大の問題点は、介護者の体力的・精神的負担が大きいことです。

更衣や移乗、トイレ補助、入浴補助など、介護をするには想像以上に体力が必要です。介護者側も高齢者となると、さらに負担は増します。介護者側の持病が悪化したりケガをしてしまったりすることで、共倒れ状態になってしまうこともあるでしょう。  

また、毎日の介護は、精神的にも相当に疲弊します。介護を受ける側とのやりとりや言動へのストレス、自分の時間が持てなくなることへのストレスなど、精神的な負担が蓄積されやすい状況に陥ってしまうからです。  

 

経済的な負担がある

介護保険制度による介護サービスを利用しない、いわゆる完全なる在宅介護であったとしても、介護にはある程度金銭的な負担がかかります。介護ベッドやオムツ代などが家計を圧迫し、さらに経済状況が悪化してしまうこともあります。

 

社会との接点が少なくなる

老老介護や認認介護では、一つひとつの介護動作に時間を要することが多く、一日の大半が介護に終わっていくケースもめずらしくはありません。そのため、介護中はどうしても社会とのつながりが希薄になってしまいがちです。

その結果、介護者はストレスのはけ口をなくしてしまい、介護うつやノイローゼを発症してしまうケースもあります。

 

正しい介護ケアができない可能性がある

正しい介護ケアができないことも、老老介護の大きな問題点です。

身体の支え方を誤って転倒してしまったり、一つのことにしか注意が向かずに事故が起きてしまったりすることもあるかもしれません。

とくに、認認介護の場合はさまざまなリスクが高まります。例えば、介護者が要介護者の体調を正しく判断できずに容態が急変してしまったり、料理中に家事が発生してしまったりといったケースです。このように、認認介護は常に命に直結するような問題と隣り合わせの状態であるといえます。

 

老老介護・認認介護の予防と対策

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老老介護や認認介護を完全になくすことは不可能ですが、できる範囲で予防・対策していくことが重要な課題です。

 

老老介護・認認介護の予防

老老介護を予防するには、以下の4つが重要です。

  • 健康的な生活を送る
  • 家族との風通しを良くする
  • 介護に関する知識を身につける
  • 地域との交流を持つ

高齢者は、日常生活のなかにバランスの良い食生活や適度な運動を取り入れ、健康的な生活を送るよう心がけましょう。

また、家族や地域との交流をもつことも、老老介護予防において重要なポイントです。家族とは、万が一介護が必要となった場合を想定した話し合いの場を設け、介護知識に関して皆で考える時間を作れるとよいでしょう。家族から直接的に介護を受けることは困難であっても、経済的な支援を受けることはできるかもしれません。

地域コミュニティとの関わりも非常に大切です。近所の人や友人と交流を持っておくことで、お互いのちょっとした変化に気付けたり、助けが必要な時には助け合ったりできるかもしれません。

 

老老介護・認認介護への対策

老老介護や認認介護が必要となった場合には、適切な対処を行い、要介護者・介護者がともに安全な生活を送れるよう、以下のようなサービスを利用し生活を整えることが重要です。

  • 介護サービスの利用
  • 成年後見制度の利用

介護サービスには、介護施設入所、通所介護、訪問介護などさまざまな種類のものがあります。サービスの利用にはお金が必要ですが、「お金がない」というだけで介護サービスの利用を諦めてしまうのはもったいないです。家庭の経済的な状況を踏まえたうえでサービスを組み合わせて利用すれば、介護負担を大きく軽減できる可能性があります。  

介護サービスのなかには、要介護認定を受けていない場合でも利用できる民間のサービスなどもありますので、まずは近くの地域包括センターに状況を相談してみることをおすすめします。

また、認認介護の場合には、「成年後見制度」を利用するのも一つの手です。成年後見制度は、認知症などにより判断能力が十分でない場合にその人の財産や権利を守る制度です。正常な判断ができるうちに相談できる「任意後見人制度」もありますので、気になる人はチェックしてみてください。

 

 

今回は、老老介護の現状と問題点、予防法、対策について解説しました。

今後ますます増加していくであろう老老介護。まずは国民一人ひとりが自分のこととして捉えることが重要です。

高齢者は、健康的な生活を心がけ、周りにSOSを出すことをためらわないようにしましょう。そして若い世代は困っている高齢者がいたら手を差し伸べることを忘れないようにしたいものです。