高齢者のワクチンの有効性を紹介します

新型コロナウイルス感染症関連で暗いニュースが続いた2020年。そんな中、11月に明るいニュースが入ってきました。新型コロナウイルス感染症に対して有効性が高いワクチンが開発されつつあるというものです。開発元はアメリカの大手製薬会社ファイザー。およそ90%程度の有効性が確認され、第3相の治験まで終了しているとのことです。今回はそんな新型コロナウイルス感染症関連のワクチンのお話や高齢者におけるワクチンの立ち位置などについて紹介していこうと思います。

  • ワクチン製造のプロセス

ワクチンは病気にかからない・かかっても重症化させないために接種します。ワクチンの開発により、病原体に感染する前から抗体(病気に抵抗できる物質)を産生でき、免疫力を獲得できます。感染症予防・根絶においてワクチン接種は非常に重要な因子となっているのです。また、近年では抗生物質の乱用が原因となり発生する「薬剤耐性菌」の出現が問題となっています。感染症を予防することで細菌性疾患に対する抗生物質の利用も減少でき、薬剤耐性菌の発現リスクを抑えることができるのです。感染症が流行している国の中には、決められたワクチン接種が義務付けられており、接種証明書が確認できなければ入国できないと取り決められています。

▲ワクチンの歴史

ワクチン開発のきっかけとなったのは天然痘です。天然痘は一度感染すると免疫を獲得するため二度と発症することはありません。これを昔の人も知っており、メカニズムを応用して予防しようと考えたのです。天然痘のかさぶたを弱毒化させたものを接種させて、軽度の天然痘を発症させます。それが治癒することで免疫が獲得できるのです。しかし、この方法には問題点がありました。それが安全性です。軽度でも一度天然痘を感染することになるため、免疫力が弱い人は死亡する事例も発生していました。そんな中、牛の天然痘である「牛痘」に罹患すると弱毒化された人間の天然痘よりも免疫を獲得できると話題になりました。それを知ったのがイギリスの医学者であったエドワードジェンナーです。ジェンナーは、牛痘に罹患すると天然痘に罹患しないという農民たちの噂話をヒントに1778年から18年に渡り研究を始めました。研究の結果、1796年にジェンナーの使用人だった、ジェームズ・フィップスという少年に牛痘を接種します。少年は若干8歳。今の日本では絶対に考えられない実験です。

フィップス少年は牛痘接種後、若干の発熱と不快感を訴えますがそれ以上の症状はないため経過観察。6週間後に天然痘を接種しますが、天然痘を発症することはなく世界初のワクチンが完成したのです。しかし、この予防方法が他の病気に有効だとされておらず天然痘に対する予防法としてローカルに広がっていくだけでした。そんな中、微生物学者のルイ・パスツールがニワトリコレラの予防法に関する研究を行い、病原体を弱毒化することで人間の身体で免疫が作られるということを発見しました。パスツールはニワトリコレラのほか、炭疽菌ワクチンの開発にも着手します。パスツールの開発を皮切りに他の疾患でもワクチンが開発されるようになりました。

▲ワクチンの種類

現在、世界で使用されているワクチンにはどのようなものがあるのでしょうか。ワクチンの種類について話を進めましょう。ワクチンは大きく3種類に分けることができます。

■生ワクチン

生ワクチンとは病原体の毒性を弱毒化したワクチンです。ワクチンとして接種した病原体は体内で増殖し、身体の免疫細胞らが反応します。この過程により、体内には抗体が産生され十分な免疫力を発揮するのです。免疫が獲得されるまで1ヶ月と時間がかかりますが、一度の接種で十分な免疫が獲得できる特徴があります。

■不活化ワクチン

不活化ワクチンとは、病原体の感染力を不活化させ原材料としているワクチンです。生ワクチンと比較すると体内で病原体が増殖しないため安全性は高いですが、1回の接種では十分な免疫を獲得できないという特徴があります。

■トキソイド

トキソイドとは、病原体の産生する毒素だけをなくして作られているワクチンです。不活化ワクチンと同様に複数回接種しなければ効果が期待できません。

ワクチンはこのように3種類に分けられますが、実際にどのようなワクチンがあるのでしょうか。

■定期接種(対象者年齢は政令で規定)

定期接種は法律に基づいて市町村が主体となっている接種です。費用は公費負担(一部自己負担)です。定期接種には以下のものが含まれます。

・B型肝炎ワクチン

・ロタウイルス

・4種混合ワクチン

・水痘ワクチン

・日本脳炎ワクチン

・HPVワクチン

・BCG

・小児用肺炎球菌ワクチン

・インフルエンザワクチン(高齢者を対象)

・成人用肺炎球菌ワクチン(高齢者を対象)

■任意接種

任意摂取とは、希望者が自分で受けるものです。法律で規定されていないため、費用は自己負担になります。任意摂取には以下のものが含まれています。

・おたふく風邪

・3種混合ワクチン

・インフルエンザワクチン

・A型肝炎ワクチン

  • ワクチンの安全性と高齢者

高齢者の方や免疫力が下がっている方(抗がん剤治療中・免疫抑制剤を使用中の方)などはワクチン摂取へ後ろ向きな考え方を持つ傾向があります。その原因として「副作用」への心配があるでしょう。副作用とは薬やワクチンの主作用と反して起きる作用のことです。痛み止めの場合は胃痛が副作用で起きやすいとされています。このような副作用を懸念してしまう高齢者の方は多く、接種する気持ちへ歯止めをかけてしまっているのが現状です。しかし、医療では「利益の方が不利益を上回る」と判断されれば利益を優先するべきという考え方があります。中でも、定期接種で定められているインフルエンザワクチンと成人用肺炎球菌ワクチンは高齢者にとって命を守る大切なワクチンです。

実際に高齢者の中でインフルエンザワクチン・成人用肺炎球菌ワクチンの接種を受けている人は50.2%、37.8%と低値となっています。これはワクチンの有効性について半信半疑な方が多い、副作用が怖いという方が一定数いるという証拠になります。では、高齢者におけるワクチン接種は意味がないのでしょうか。結論からいえばそうではありません。高齢者に対してワクチン摂取をすることは非常に有意義で有効性が確認できています。インフルエンザウイルスは大きく2種類の株があります。そのうち流行するであろうウイルス株を予想し、ワクチンとして市場へ流通させているのですが、国内の多くのインフルエンザウイルスはA型です。無論、製薬メーカーもインフルエンザウイルスA型株に対するワクチンを製造しており、それらに対するワクチンの有効性を評価しています。20歳〜64歳の年齢層ではインフルエンザワクチンを摂取したことによる有効性が68%という結果が出ました。また、高齢者は若年層と比較するとワクチンの有効性が得られないという意見もありますが、インフルエンザワクチンの高齢者だけのデータが確認できていない現状があります。しかし、学童へインフルエンザワクチンを集団接種した結果、高齢者のインフルエンザによる死亡率を低下させたという間接的な結果が出ています。ワクチンは一概に危険と言うのではなく、自分や周囲の人を守るために必要不可欠なものだということがわかります。

インフルエンザワクチンと同様に成人用肺炎球菌ワクチンでも有効性が確認されています。肺炎球菌ワクチンの場合、肺炎球菌性疾患(特に菌血症)の発症を56〜81%予防できたと報告されています。

  • 高齢者特有の疾患を予防するワクチン

高齢者は若年層と比較して呼吸器系の疾患に罹患しやすいです。その理由は誤嚥。嚥下する力が落ちてしまうことから、肺炎球菌やインフルエンザなど呼吸器系の疾患には注意が必要となるのです。この2つの疾患に関してはワクチンが開発されていることから高い予防効果を実感できます。高齢者の方が周りにいる方はワクチン接種を推奨するとともに、みなさんもワクチン接種することでご家族を守ることができるかもしれません。

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