諸外国と日本の医療制度を比較して新型コロナウイルスの拡大を分析しました

 

新型コロナウイルスが世界的な拡がりをしています。以前、新型コロナウイルスについて在宅医療でどのような工夫をすれば良いか紹介しましたが、今回は諸外国の医療制度を紹介しつつその中で新型コロナウイルスの拡がりについても考えていこうと思います。

  • 日本と諸外国の医療制度

日本と諸外国では医療制度で大きな違いがあります。日本の医療しか経験していない我々にとっては意外に思うことが多いかもしれません。まずは日本の医療から順に見ていきましょう。

▲日本の医療制度

日本の医療制度は社会保険方式で国民皆保険と呼ばれています。読んで字のごとく、国民全員が加入している医療保険で誰でも同じ医療を受けられる体制が整っています。国民は必ず公的保険へ加入して、支払った保険料を財源として加入者が病気や怪我になったとき、医療サービスを提供するという方法を採用していることで国民皆保険制度が成り立っています。国民は皆、保険証というカードのようなものを持つことで国内の保険医療機関であれば医療を受けることができます。全国どこの医療機関でも利用できることから日本の医療保険は「フリーアクセス」と表現されることがあります。

国民皆保険制度が制定されたのは1961年からです。以降、約60年もの間制度が保たれてきました。日本の医療保険はフリーアクセスの他に自己負担金も特徴として挙げられます。自己負担金とは医療サービスを受けた後に窓口で支払う金額のことです。一般的には3割が自己負担金としてかかります。医療サービスで10000円かかった場合は約3333円を負担すれば良いというものです。自己負担金は主に年齢で分けられます。70歳以上74歳未満の方は2割負担、75歳以上の方は1割負担となっています。これだけでも医療を受ける門戸が広く用意されていますが、さらに1ヶ月あたりにかかった医療費が一定額以上の場合はそれ以上は自己負担しなくて良い「高額療養費制度」という制度もあります。この後紹介する他国では、医療費はかかった分だけ負担するのが一般的なため日本独自の素晴らしい制度といえます。

▲イギリスの医療制度

イギリスの医療制度は税方式と呼ばれます。医療サービスを主に運営しているのは国民保健サービス(NHS:National Health Service)と呼ばれる団体です。NHSはイギリスに住所を持つ人を対象に、医療サービスを展開しています。医療は日本のようにフリーアクセスではなく、かかりつけ医による医療で統一されています。日本でもかかりつけ医はいますが、これはあくまでも任意です。かかりつけ医を日頃受診して、大きな病気が疑われる時や緊急性の高い治療が必要なときに大きな病院を受診する。ただし、最初から大きな病院へ行くことも可能なのが日本です。イギリスは必ずかかりつけ医を通さなければ大きな病院を受診できません。イギリスは日本と違って医療サービスを受けた後に窓口にて自己負担金を支払う必要はないですが、NHSは基本的に混んでいることが多くそこから診察を待ち、大きな病院を紹介してもらうと病状が進行してしまうなどの問題点もあります。

▲ドイツの医療制度

ドイツは世界の中でも公的な医療保険制度を導入した国で有名です。日本のようなシステムですが、日本の場合は国民全員が保険に加入している一方でドイツは9割程度しか加入していません。もともとは、低所得層や特定企業の従業員などを対象に公的な医療保険制度を発足させました。そのため今でも年間所得が一定額以下の被用者や学生・失業者などが加入して、公務員や年間所得の高い被用者が未加入という事例が起きているのです。ただし、医療を公平に行うという観点から公的保険に加入していない人も、2009年以降は民間保険への加入が必須となっています。官民合わせた形となれば日本と同じように「国民皆保険」となっているのです。

今では日本でも導入されつつありますが、かかりつけ医からの紹介状を持たずに大きな病院へ行くと場合によって自費分として加算されることがありますよね。このシステムはドイツ発祥です。ドイツではかかりつけ医からの紹介状を持たずに病院を受診すると10ユーロを負担しなければいけません。この制度が周知されてから国民の約9割がかかりつけ医を持つようになりました。病院へ入院すると自己負担金が発生しますが、一般的な診療に関しては年間所得の2%まで負担すれば良いと決まっており国民一人ひとりに日本でいう「高額療養費制度」が適用されている珍しい国でもあります。

▲フランスの医療制度

フランスは社会保険方式を採用しています。日本と同じような状況ですね。国民の約99%が公的保険に加入しており、医療保険の財源には税金が投入されているのも日本と同じです。外来を受診した場合は3割・入院した場合は2割を自己負担金として支払う必要があります。日本と大きく異なる点は自己負担金の支払い方法です。日本では総医療費のうち、自己負担すべき3割を窓口で支払うことになります。フランスでは、一度窓口で総医療費を支払い、その後、自己負担分を差し引いたお金が戻ってくるシステムとなっているのです。

ドイツ同様、かかりつけ医受診を奨励するシステムがあり、かかりつけ医の紹介状を持参して病院を受診すると前述の通り総医療費の3割を自己負担します。一方、かかりつけ医からの紹介状を持参せずに病院を受診すると自己負担の割合が5割になるのです。このシステムを導入した結果、かかりつけ医を持つ人は国民の約85%までになりました。

▲アメリカの医療制度

アメリカは全ての医療が自費診療というイメージが強いですが、公的医療制度も存在します。65歳以上の高齢者や障害者を対象にした「メディケア」と低所得者を対象にした「メディケイド」です。この他の現役世代と呼ばれる世代は民間保険しか利用できないため、アメリカの医療費は高額になっているという印象を与えてしまうのです。

メディケアとメディケイドは2009年のオバマ大統領が発案した医療改革の一つでした。これらに合わせて民間保険会社への加入を必須事項としたことで国民はいずれかの保険に入り「国民皆保険」へとつながるという構想を打ち立てたのです。しかし、健康な人は保険料を支払うことがバカバカしく、無保険の状態でいる人もいました。逆に持病を持っている人は虚偽報告をして保険を契約し保険会社の経営を傾かせたという事例もあります。アメリカの医療は世界でも最高レベルですが、医療を取り巻く環境はまだまだ発展途上と言えるでしょう。

  • コロナウイルスと世界の状況

さて、少し長くなりましたが世界の医療制度を紹介しました。この医療制度から今回世界中で問題となっている新型コロナウイルス感染症がどのような拡がり方をしているのか見ていきましょう。

▲日本の新型コロナウイルス感染症の広がり方

日本は水際対策が失敗に終わり、中国や韓国からコロナウイルスに感染した観光客を入国させてしまいました。その後、濃厚接触者の特定などが始まりましたが国民皆保険の特徴であるフリーアクセスで新型コロナウイルスを検査せず、健康観察を続けています。2020年3月現在では新型コロナウイルスの検査を保険適用とした他、国立感染症研究所だけでなく民間検査会社でもPCR検査を行っています。フリーアクセスで国民がどこでも好きな医療機関へアクセスできることから政府によるコントロールがなければ院内感染で多くの感染者が出ていたかもしれません。

▲イギリスの新型コロナウイルス感染症の広がり方

イギリス国内では新型コロナウイルス感染症の患者数が17000人を超えています。(2020年3月現在)この数字の背景にはNHSを介さなければ大きな病院へいけないことが関係していると言えるのではないでしょうか。また、NHSは混んでいるため診療を待っている間に感染したことも考えられます。

▲ドイツ・フランスの新型コロナウイルス感染症の広がり方

ドイツは57000人以上が新型コロナウイルス感染症に感染しています(2020年3月現在)。事実上の国民皆保険ですが、国内で感染が拡がり、医療崩壊に近い状態まで進むと感染者は回復者よりも感染者数の方が多くなり、増加の一途を辿ることになります。

フランスも同様なことが言えるでしょう。

▲アメリカの新型コロナウイルス感染症の広がり方

アメリカは世界の中で最も感染者数の多い国となりました。医療保険に加入していなかった人は病院へいけず、感染した状態で働かざるを得なかったため市中感染が拡がったものと考えられます。

近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
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