年金制度改正のポイントを押さえよう!2022年10月からここが変わった!

2020年5月に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が制定されました。より多くの人が長く就労できるよう多様化する中で、長期化する高齢化社会の経済基盤を充実させるための制度です。

制度改正は2022年4月から施行され、さらに10月より適応拡大となっています。どんな改正がされているかご存知でしょうか。今回は年金制度改正のポイントや背景などを、わかりやすく解説します。私達の生活に大きく関わってくるので、しっかり理解しておきましょう。

現在の年金制度とは?

年金は3階建ての構造になっている

「公的年金」は国が運営する年金を指しており、「国民年金」と「厚生年金」の2段階になっています。日本は20歳以上60歳未満の全ての国民が公的年金に加入することになっています。

1階部分は国民全員加入の「国民年金」、2階部分は職業に応じた上乗せ給付を行う「厚生年金」です。この1・2階部分は「公的年金」といい、国が社会保障の一環として運営しています。3階部分には、企業や団体が運営する「企業年金」などがあります。

社会保険に加入している会社員の方などは、厚生年金に加入していることが多いですが、自営業などの方は1階部分の国民年金だけになり、会社員よりも年金額が少なくなる可能性があります

年金制度改正とは?

日本ではシニア世代や女性の就労が増えていたり、多様な働き方が求められています。また「少子高齢化」により、現役世代の人口減少・現役世代への社会保障費の負担が増大しているという問題があります。こうした問題を解消するために成立した法律です。

これまでも年金制度は都度改正されてきましたが、令和4年4月からは「社会保険の適用拡大」「年金受給開始の選択肢が拡大」「在職中の老齢厚生年金の改定」「確定拠出年金加入要件が緩和」の4点がポイントになります。

社会保険の適用拡大

アルバイトやパートなどの短時間労働者の社会保険適用が拡大されます。
現在は従業員501人以上の企業で、週20時間以上の勤務などの条件を満たす短時間労働者に厚生年金が適応されています。今回の制度改正で、段階的に適用を拡大していくことになりました。

従業員数501人以上という条件から、2022年10月より「従業員数101人以上」、2024年10月からは「51人以上」の事業所が適用になります。

社会保険に加入することで、厚生年金の対象になったり、傷病手当金を受け取れたりと、メリットが多いと言えます。

施工前施行後(2022年10月以降)
勤務期間が1年以上見込みがある継続して2カ月を超えて使用される見込み
従業員規模が500人超の企業従業員規模が常時100人超の企業
週の労働時間20時間以上変更なし
月額賃金が8万8,000円以上変更なし
学生は適用外変更なし

                          

年金受給開始の選択肢が拡大

現在年金は60歳から70歳までの間で受給できますが、今回の制度改正で70歳から75歳までに引き上げられます。シニア世代の就労者が増えたことから、年金開始の選択肢が広がったと言えるでしょう。

年金は65歳より前に受給すると1ヶ月0.5%減額、65歳より後に受給すると1ヶ月0.7%増額になる仕組みです。75歳から受給すると84%の増額になります。

ただし75歳以上から受給することにデメリットもあります。

・平均寿命まで生きていたとしても、年金受給額の総額が減る可能性がある

・年金額が上がると、税金の金額も上がる

税金の金額が上がると、支出が増える可能性があります。そのため75歳に繰り下げることが、必ずしもお得だとは言い切れません。                   

在職中の老齢厚生年金の改定

在職老齢年金制度とは、60歳以降に就労しながら年金を受給する場合、就労した結果受け取れる賃金と年金額の合計額が一定の基準額を超えると、年金額が減額・停止される仕組みです。

今まで年金が停止される基準額は、賃金・年金の合計額が「28万円」でした。しかし今回の制度改正で、基準額が「47万円」に引き上げられます。

今まで働き方を制限していた方も、今回の制度改正でより積極的に就労することができます。

また今回の制度改正で「在職定時改定」が導入されることになりました。

在職定時改定とは、就労している65歳以上の老齢厚生年金受給者の保険料を、毎年10月に年金に反映させる制度です。今までは退職時もしくは70歳到達時に年金に反映されていましたが、すぐに年金に反映される仕組みになり、就労者のメリットになります。

確定拠出年金加入要件が緩和

確定拠出年金制度とは、企業型・個人型がありますが、毎月掛け金を積み立てし、加入者が自ら年金の資産運用を行う制度です。

企業型の場合、企業が毎月掛け金を拠出し、従業員が年金を運用していきます。

今回の制度改正では、確定拠出年金を利用できる要件が緩和されます。

・企業型DCの場合、加入可能年齢が65歳未満から70歳未満に変更

・個人型DCの場合、加入可能年齢が60歳未満から65歳未満に変更

また海外居住者も国民年金に任意加入していれば、iDeCoに加入できるようになるほか、2022年10月からは企業型DCの加入者も、労使の合意がなくてもiDeCoに加入できるようになります。確定拠出年金制度は受給開始時期なども見直しがされているので、内容を理解しておくとよいでしょう。

【まとめ】年金制度改正で変わること

・短期労働者の社会保険の適用が拡大される

・年金の受給開始が70歳から75歳までに引き上げられる

・在職老齢年金が、28万円から48万円までに引き上げられる

・確定拠出年金加入要件が緩和される

シニア世代の就労者が増えている中で、今回の制度改正は就労者の経済的安定を図る内容になっています。「人生100年時代」と言われている日本では、長期的な経済計画が大切になります。