高齢者に多い「尿漏れ」の原因と対策は?

高齢者が悩まされやすいトラブルの一つである「尿漏れ」。尿漏れにはさまざまな原因があり、それによって予防法や対応も異なります。  

 

今回は、尿漏れの原因と対策について解説します。

尿漏れの種類

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 24875665_s.jpg

尿漏れをはじめとした、頻尿や尿の出にくさなどの排尿にまつわるさまざまな不快症状は、主に「蓄尿障害」と「排出障害」によって起こっています。

蓄尿障害(尿をためきれずに漏れる)

尿をためられずに漏れてしまう蓄尿障害は、さらに4つのタイプに分類されます。

腹圧性尿失禁

腹圧の上昇により起こるのが、腹圧性尿失禁。主な原因は、骨盤底筋群や、尿道を締め付ける役割を担う尿道括約筋の衰えです。重い荷物を持ち上げた時や運動したとき、また咳・くしゃみをしたときなどに腹圧が上昇し、尿が漏れてしまいます。尿道や尿道のまわりに異常があることが多く、過活動膀胱ではありません。

切迫性尿失禁

切迫性尿失禁は、突然強い尿意に襲われ我慢できなくなってしまうものです。膀胱が不随意に収縮することによって起こる過活動膀胱が主な原因であるものの、膀胱の機能をコントロールしている脳神経に問題があることも。また、男性の場合は前立腺肥大、女性の場合は膀胱や子宮などの臓器が本来あるべき位置より下がってしまうことも、原因の一つであると考えられています。切迫性尿失禁の場合、残尿が多くなる傾向にあり、尿路感染症や腎機能障害にも注意が必要になります。

溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)

溢流性尿失禁は、尿意があるもののうまく尿を排泄できず、溢れるように少しずつ漏れ出してしまう状態のことをいいます。前立腺肥大や、直腸・子宮の手術歴による膀胱の周りの神経機能が低下した状態の人に起こりやすく、放置すると尿が出ない「尿閉」となってしまうため治療が必要です。場合によっては、尿動口から膀胱に向かって管を挿入して尿を出す「導尿」という処置が必要になることもあります。

機能性尿失禁

排尿するための機能には問題がないのにもかかわらず、体の動きの問題や認知症によって起こるのが、機能性尿失禁。具体的には、足を痛めていてトイレに間に合わなかったり、認知症によってトイレの場所がわからなくなってしまったりします。

排出障害(尿をすべて出し切れずに漏れる)

尿をすべて出し切れずに漏れてしまう排出障害は、大きく「膀胱収縮障害」と「尿道通過障害」の2つに分けられます。

膀胱収縮障害(低活動膀胱)

膀胱収縮障害では、膀胱の収縮力が低下しているため尿の排出がうまくできません。糖尿病性抹消神経障害や椎間板ヘルニア、腰部脊椎間狭窄症、骨盤内臓器手術歴(直腸、子宮など)の影響を受けて発症します。  

尿路通過障害

尿路通過障害は、尿の通り道がなんらかの原因で狭くなったり閉塞したりすることによって起こります。前立腺肥大や前立腺がん、膀胱頸部硬化症などの疾患が原因となりますが、なかでも前立腺肥大が、尿路通過障害のなかで最も多い疾患です。

尿漏れへの対策

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 25222283_s.jpg

尿漏れがある場合は、まず自分の尿漏れのタイプや原因を知ることが大切です。

 

症状が続く場合はなんらかの疾患を発症している可能性もあるため、医療機関を受診しましょう。場合によっては、薬物治療や手術治療が必要となることもあります。

 

ここからは、自分で行える排尿予防行動についていくつか紹介します。

骨盤底筋群を鍛える

腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁に効果的なのが、骨盤底筋群トレーニング。骨盤底筋群は、骨盤内の臓器を支えたり、排泄をコントロールする働きを担っている大切な筋肉です。加齢により筋力が低下してしまうため、男性は肛門を、女性は膣を閉めるイメージでトレーニングしましょう。深呼吸をしながら骨盤底筋群を強く閉め、5秒間保持してみます。空いた時間にできる簡単なトレーニングであり、おすすめです。

排尿はできる限り座って行う

排尿する際には、膀胱内に尿を残さないことが重要です。尿が残った状態では、尿が膀胱から腎臓へ逆流してしまうことがあり、腎機能低下のリスクがあります。自分でできることとしては、男性でも座位での排尿を心がけることです。また、身体症状などにより臥床して過ごすことが多い人であっても、排尿時はできる限り身体を起こし、座位でするようにしましょう。

                        

 

座位で排尿することにより、腹圧と尿が出る方向が同じ向きとなるため、尿をすべて出し切ることができるようになります。

 

外出前・睡眠前の水分摂取は控える

高齢者にとって水分摂取は大変重要ですが、摂取するタイミングには注意したいものです。外出前や睡眠前に多量の水分を摂取すると、その後の尿漏れのリスクが高まるため、控えましょう。かといって、不安になりすぎて必要な水分量を摂取できなくなっては困ってしまいます。水分摂取は、気が付いた時に少量ずつ、こまめに行うと良いでしょう。

カフェインを含む飲料・アルコールの摂取を控える

カフェインやアルコールには、利尿作用があります。尿意を催しやすくなり尿失禁が起こってしまうため、摂取は控えましょう。

肥満に注意する

肥満は、骨盤底筋群が衰える原因となってしまいます。肥満を指摘されている人で尿漏れがある場合、肥満を解消することで尿漏れも改善に向かうことがあるため、食事内容の見直しや積極的な運動により、肥満を解消する努力をしてみましょう。

尿取りパッドやオムツを活用する

どのタイプの尿漏れにもいえることですが、外出時や睡眠時などには、尿取りパッドやオムツを活用してみましょう。オムツなどを使うことに抵抗を覚える人もいますが、万が一に備えてパッドやオムツを装着していれば、外で尿漏れが起きてしまったときでも安心して過ごせます。これらのグッズを使用することは恥ずかしいことではありません。

マグネシウムを積極的に摂取する

マグネシウムを多く含む食材を摂取することで、尿漏れを改善できる可能性があります。

マグネシウムは、油揚げやゆで大豆などの豆製品、あさりやはまぐり、生牡蠣、金目鯛などの魚に多く含まれるため、可能な範囲で日々の食生活に取り入れてみてください。

環境の改善

機能性尿失禁の場合には、環境の改善や家族の理解、介護が必要です。普段過ごすスペースとトイレの距離を近くする、家族がいる場合には定期的に本人をトイレに誘導するなど、工夫しましょう。

 

便秘を改善する

日頃から便秘傾向にある人は、便秘を解消することで尿漏れも改善することがあります。

便が腸に溜まっていると、膀胱が圧迫されてしまい尿漏れが起こりやすくなるからです。



今回は、高齢者によくみられる尿漏れについて、その原因や対策を解説しました。

 

尿漏れにもさまざまなタイプがあり、トレーニングや日常生活への工夫によって症状を軽減させたり予防したりすることが可能なものもありますが、疾患が原因となっており治療が必要なものもあります。

 

尿漏れの原因やタイプを自分だけで判断するのは難しいため、必要に応じて医師に相談してみましょう。