認知症の中でも大きな割合を占めるのは「アルツハイマー型認知症」だった

高齢化社会の進む日本の中で問題になっているのが高齢者の認知症です。認知症とは加齢による物忘れとは異なり、日常生活に影響を及ぼすほどの記憶障害が特徴です。今回はそんな認知症について詳しく紹介していこうと思います。

  • 高齢者と認知症の組み合わせ

高齢者の方は物忘れが激しくなる傾向があります。人間の脳は子供から成長するときに容量が大きくなり脳細胞数が増加していきます。この時期にしっかり勉強すると脳細胞が刺激され記憶などが効率的に行われています。そんな脳細胞も30歳前後を境に脳のシワの数が多くなり、萎縮し始めるといいます。30歳から始まった萎縮は60歳になると目で見て分かる程度まで萎縮が進みます。萎縮が起きても全盛期と比較して7%程度の減少で済むため、脳機能は基本的に問題ないといえるのです。しかし、萎縮の早さや程度には個人差があるため、物忘れの頻度やうっかりミスの回数、判断力が低下するなどの症状に個人差が出てきてしまいます。加齢による脳萎縮は買い物をするときに何を買うのか忘れてしまった、話の内容を忘れてしまったなどですが、認知症になるとそれよりも大きな障害が起きてしまうのです。

認知症が起きると脳萎縮はもちろんですが、明らかな症状も出てきます。認知症の中で代表的な症状の一つに被害妄想があります。買い物をしても自分の財布からお金が無くなっていると被害妄想を持ち、家族がお金を盗んだと警察へ通報することがあります。また、自宅で療養している場合、介護スタッフや医療スタッフの訪問があったら不法侵入されたと被害妄想を持つことも珍しくありません。

さらに、認知症が進行するとトイレの仕方や便意・尿意などの排泄を催す感覚、酷い人は咀嚼の仕方などを忘れてしまい日常生活が送れなくなることもあります。

▲認知症の種類

認知症は大きく3種類に分けることができます。アルツハイマー型認知症、脳血管型認知症、レビー小体型認知症の3つです。この3つの違いについて紹介していきましょう。

■アルツハイマー型認知症

認知症の中でも最も発症数が多い型の認知症がアルツハイマー型認知症です。脳の表面にアミロイドベータタンパクやタウタンパクと呼ばれるタンパク質が付着することで脳神経が死滅して、脳萎縮が進行します。中でも記憶の中枢と呼ばれる海馬という部分の萎縮が進んでしまうと記憶障害や認知機能低下が顕著にみられます。加齢による脳萎縮と比較して年単位で穏やかに進行していくのが特徴です。

■レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、脳神経細胞の中にレビー小体というタンパク質が出現することで発症します。レビー小体が脳の一部に沈着している程度では問題ないですが、大脳全体に広がることで認知症を発症するようになります。1日の中でも時間帯や天気など様々な要因が関係しながら、調子が良い時と悪いときを繰り返しながら進行していくのが特徴です。

■脳血管型認知症

脳梗塞や脳出血など脳血管疾患の発症をきっかけに進行する認知症です。脳梗塞や脳出血が起きると発生部位周辺の脳神経細胞が死滅します。脳の中でもどこにダメージを受けているのかで起きる症状が異なりますが、脳血管疾患の後遺症でも挙げられる手足の痺れなども併発するのが特徴です。脳血管疾患も急発するのが特徴で、認知機能の低下が突然起きることがあります。

▲認知症の割合

平成29年高齢者白書をみると、2012年の認知症患者数が約460万人とされています。WHO(世界保健機構)の発表によると世界の認知症患者数は約3560万人。この数字は2030年に6570万人、2050年に1億1540万人まで増加すると予想されています。日本国内でみても認知症施策推進総合戦略(厚生労働省)のデータをもとに予測をすると2030年に830万人、2050年に1016万人が認知症を発症すると予測されています。この計算で行くと将来的には85歳以上の人の約55%が認知症になるという計算です。

先ほど3種類の認知症を紹介しましたが、この詳しい割合も紹介していきましょう。アルツハイマー型認知症は認知症の中でも発症率が高いです。認知症全体の約70%を占めています。次に多いのがレビー小体型認知症です。認知症のおよそ20%はレビー小体型認知症といわれています。そして脳血管型認知症です。100人に2人の割合で発症しています。65歳未満の方が対象となる若年性認知症の原因としては脳血管型が最も多く全体の40%を占めています。

▲認知症の症状

認知症はどのような症状があるのか順番にみていきましょう。

■アルツハイマー型認知症の症状

アルツハイマー型認知症は認知機能障害・BPSD(行動・心理状態)が特徴的な症状です。認知機能障害では食事をしたのにしていないと思ってしまう、日付が分からなくなる・今いる場所がわからない・家族と他人の区別がつかないなどが挙げられます。また、判断力が低下するため自己判断ができなくなることも珍しくありません。BPSDは行動・心理症状のことで無関心になったり、妄想癖が出たり、徘徊をするようになります。皆さんが思う一般的な認知症はアルツハイマー型認知症のことが多いですね。

■レビー小体型認知症の症状

レビー小体型認知症の代表的な症状は認知機能障害です。アルツハイマー型認知症と異なるのは注意力がなくなる他、ものが歪んで見えるなど空間認識力も低下することです。他にもBPSDの一種として抑うつ症状が見られることがあります。抑うつ症状はおよそ5割の方で見られており、割合の高い症状です。その他、パーキンソン病のような動作緩慢・無表情・筋肉の強張り・小刻みに歩くなどの症状が出るのも特徴です。しかし、レビー小体型認知症は前述でも紹介したように、症状が良い状態と悪い状態を繰り返すことがあるため変化に注視する必要があります。

■脳血管型認知症の症状

脳血管型認知症の症状で代表的なものは身体障害です。脳血管の疾患により脳神経細胞が障害を受けることで、手足の麻痺や感覚異常が出ることがあります。また、他の認知症と異なり判断力や記憶力は保たれることが多いですが認知機能が急激に低下することがあるため注意が必要です。

▲認知症の検査

高齢化社会が進む中で認知機能の低下を疑ってから認知症の検査をすることも大切ですが、認知症の早期発見・早期治療も重要になります。そこで認知症を発見するために必要な検査について紹介していきます。

■身体検査

尿や血液を採取して異常が起きていないか確認します。内分泌検査で血中ホルモンを測定することもあり、身体内で異常がないか判定します。

■認知機能テスト

認知症の主な検査の一つです。医師や臨床心理士の設問に答えてその回答をもとに認知機能の評価をします。代表的なものに長谷川式スケールとMMSE検査というのがあります。長谷川式が一番メジャーな検査方法で、年齢をきく・生年月日を聞く・今いる場所を聞くなど決まった質問をして回答してもらいます。他にも「今から言う数字を逆から言ってください」と言う設問もあり簡易的な記憶テストを兼ねているのが特徴です。MMSE検査はアメリカで発明された検査方法で、テストにかかる時間が10分前後と短いため利用されています。計算力や図形の描写などを行い認知機能の評価を行なっています。

■脳画像検査

脳の萎縮程度を評価するためにMRI検査とCT検査を行います。この両方の検査で海馬の萎縮が著しい場合、認知症を疑います。

  • 認知症は一人で悩まずに相談しよう

家族が認知症になった場合、一人で悩まずに誰かに相談しましょう。相談することで地域ごとに認知症のケアハウスや専門的に治療を受けられる病院などが見つかるかもしれません。認知症になって一番ショックを受けているのは患者さん本人です。また、その介護やケアの中でご家族も気疲れしてしまうことがあります。そうならないためにも相談できるところへ相談して任せられることは任せることで家族の負担を軽減しましょう。

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