高齢者の免許証返納について考えます

2020年現在、日本国内は4人に1人が高齢者といわれています。高齢化が進む中で若い世代が高齢者の生活を支えるよりも、高齢者がどこまで自立して生活できるのかがこれからの日本の課題となります。自立生活の中には日常生活も含まれていますが、高齢者が日常生活を送る中で必要不可欠なのが車の運転です。また、運転免許証を返却する高齢者も多くなっており高齢者の生活をどのようにして維持させるのかが今後の課題となるでしょう。今回は高齢者と免許証について紹介していきましょう。

  • 高齢者の運転

日本の総人口は約1億2000万人です。平成28年末には運転免許証の保有者は約8221万人です。国民の70%近くが保有している運転免許証。今や街中に乗用車やトラックなどがいますよね。その分、交通事故も多く運転手の注意やマナーが問われてくるようにもなりました。平成の終わり頃から日本の交通事故に高齢者による交通事故が増えてきたように思えます。国民の4人に1人が高齢者の時代なので当たり前といえば当たり前ですが、高齢者の事故にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

▲高齢者の交通事故発生状況

高齢者の事故が増えていると言ってもどれくらいの数あるのか把握する必要があります。警視庁のウェブサイトの中に「高齢運転手が関与した交通事故発生状況」というものがあります。こちらをみると、年間の交通事故発生件数と高齢者事故の割合が分かります。平成19年には年間の交通事故発生件数が約68000件でした。そのうち約13%が高齢者による交通事故です。年間の交通事故発生数は平成23年に約51000件、平成28年には約32000件と年々減少傾向となっています。これは車に搭載された自動ブレーキシステムなどが有効的に働いていることも関係しているのではないでしょうか。もちろん、完全自動運転や安心安全を担保するものではないため機械任せにしてはいけないですが一定数の交通事故を防ぐ働きはあることが証明されていると思います。年間の交通事故発生件数は年々減少していますが、高齢運転者による交通事故の割合は増加傾向となっています。平成23年には約16%、平成28年には約22%が高齢者の運転手が起こした交通事故でした。

▲高齢者が全て悪いのか

高齢運転手が絡んだ交通事故が多くなっているのは事実ですが、発生した交通事故の全てが高齢者の責任なのかといえば違います。警視庁の別の資料をみると交通事故を起こした原因の年齢別事故件数があります。平成18年〜28年まで年々交通事故件数が減っていることは変わりないですが、年齢別の交通事故発生件数で多いのは10代です。次に80歳以上、次に70歳代となります。高齢者だけが悪いのではなく、運転免許を所有した手の10代

のドライバーも交通事故を起こすリスクが高いことが分かりますね。

▲高齢者の交通事故原因

高齢者はどのような状況で交通事故を起こすのでしょうか。公益財団法人交通事故総合分析センターの調査結果をみると交通事故の発生状況について分かります。非高齢者の事故で最も多い事故は追突事故です。また、出会い頭の事故も多いです。高齢者の交通事故では出会い頭や右左折時など交通環境を認知して判断しなければいけない状況下で起きる交通事故が多いです。出会い頭は信号機のある交差点ではなく、信号機のない交差点で多く発生しています。

  • 高齢者の運転社会

高齢運転手による運転を避けるために必要なのは「運転させない」ということです。しかし、住んでいる地域によっては高齢者が運転せざるを得ない状況もあります。例えば、東京都内や大阪市内など公共交通機関が発達している地域では車の運転をしなくても生活するのに不便は少なそうですが、郊外では車が生活に必須というところも少なくありません。

さらに、高齢運転手は今の自分の実力を把握することで運転技術を過信せずに安全運転につながることがあります。例えば視力がどれくらいあるのか定期的に検査して、新しいメガネを作ることで集中力や万が一の際に反応できるようになります。高齢者の交通事故の多くは「空間認識力」が低下することで起きます。そこで最近では免許証の更新をするときに認知力検査などが行われるようになりました。茨城県内では70歳以上の方を対象に高齢者講習か特定任意高齢者講習(簡易)・特定任意高齢者講習(シニア)のいずれかの講習を受講していなければ運転免許証の更新ができないことになっています。さらに、75歳以上の方を対象に認知機能検査(記憶力・判断力の検査)が追加で行われています。75歳以上の方は認知機能の低下が認められた場合、免許証の更新を認めていません。

  • 実際に起きた高齢運転手による交通事故ケース

実際に日本国内で発生した高齢運転手による交通事故を紹介します。

▲逆走ドライバー

群馬県前橋市で85歳の男性が運転する乗用車が対向車線にはみ出して、斜め前の住宅へ衝突。自転車で近くを通学していた女子高生に衝突して、女子高生は意識不明の重体となった。

 

▲高速道路の逆走

関越道を軽トラックで走行していた車を順路で走行していた車の男性が発見。衝突しそうになったので急ハンドルを切った際に車がスピンして、中央分離帯と近くを走行していた車に衝突。事故原因を作った軽トラックの運転手(75歳)はそのまま走り去ったが3日後に警察の捜査で判明。記憶にないとの証言をしていたが、後々の調査で軽トラックを運転していた男性は認知症で免許証を取り消されていたことが判明。

▲ブレーキとアクセルを踏み間違える

妻(80歳)と一緒に買い物へ行った男性(79歳)が大型スーパーに車を駐車。車の位置を移動しようとしたところ、クリープ現象が発生。男性はマニュアル車からオートマチック車へ乗り換えたばかりでクリープ現象の発生に驚いてしまい、急ブレーキを踏んだところ、ブレーキとアクセルを間違えてしまう。車は急アクセルのため目の前にいた買い物客の列へ突っ込んでしまい、3歳の少女を含む4名へ怪我を負わせることになりました。妻は運悪く車の下敷きになり死亡。

 

▲高速道路を逆走②

新東名高速道路を車が逆走していると110番通報がはいる。静岡県警高速隊が逆走中の軽自動車を停止させ、運転していた男性(84歳)に交通反則切符を交付。調べてみると男性は新清水ICの料金所の手前でUターンして、時速70kmで約15分間も逆走していたことになる。幸い交通事故は起きなかったが危険な出来事であった。

 

▲池袋暴走事故

東京メトロ東池袋駅付近の交差点にて、男性(87歳)が運転している乗用車が多重衝突事故を起こした。乗用車は赤信号を無視して交差点内へ侵入。横断歩道へ突っ込むなどして母子2名が死亡。10名が怪我を負った。この男性は赤信号を無視して交差点へ侵入する前に、すでに赤信号を2回無視しており、ブレーキをかけた痕跡もなかったことがドライブレコーダーから明らかになった。さらに、男性は以前に医師からパーキンソン病の疑いを指摘されており運転をしないよう指導を受けていたが、指導を無視して運転した結果このような惨劇を起こしてしまった。全国的にもニュースになり現場に近い公園に慰霊碑が建立されるなど高齢者の交通事故に関して社会全体で考えるきっかけとなった事件であった。

  • 高齢者は運転免許証の返納を積極的にする

高齢者の方で運転に自信がない方や、家族から運転力の低下を指摘されたような人は免許証の返納を検討しましょう。実例で紹介した交通事故の多くは死亡事故へと発展していますし、高額な慰謝料請求が伴うこともあります。茨城県内の市町村では運転免許証を自主返納した場合、公共交通機関利用の優遇制度が用意されています。公共交通機関となっていますが、県内のタクシー会社の優待券や回数券に対する助成制度もあります。自分の大切な人はもちろん、誰かの大切な人の命を守るためにも、運転に自信がなくなったときには免許証を自主返納するようにしましょう。

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